【新春トップインタビュー】横浜ゴム 野地彦旬社長

2017年01月02日

ゴムタイムス社
  • 野地彦旬
  • 社長
  • 横浜ゴム
  • 創業100周年の目標達成へ
  • 野地彦旬社長

 今年、創業100周年を迎える横浜ゴムは、今年度が最終年度となる中期経営計画を推進している。ここ数年で最も積極的な補修用タイヤ市場向け新商品投入などにより、目標達成を目指す野地彦旬社長に17年の取り組みを語ってもらった。

◆16年を振り返って

 オフハイウェイタイヤのメーカーであるアライアンスタイヤグループ(ATG)を買収するなど、非常に大きく動いた年になった。

 第3四半期までの当社のタイヤ事業は、国内新車用タイヤの販売は自動車生産台数の減少などにより低調に推移した。国内市販用も前年同期を下回ったが、新製品を投入し、高付加価値製品を中心に販売を強化した。

 海外については、北米は全体的に堅調で、欧州は新規販路が販売に寄与するなど好調に推移したほか、中国は小型車向けの減税で自動車販売が回復し、新車用タイヤが好調だった。7月に買収したATGでは、農機用タイヤを中心に積極的な販売活動を実施した。

 MB事業では、市場環境の悪化に伴う需要の低迷に加え、円高による為替の影響により、ホース配管、工業資材、ハマタイト・電材、航空部品のそれぞれの分野で売上高は低調に推移した。

◆中計の進捗状況は

 当社は、創業100周年となる今年に達成を計画している中期経営計画「グランドデザイン(GD)100」の最終章となる「フェーズⅣ」を実施している。

 フェーズⅣのタイヤ事業戦略としては「グローバルOE市場への注力」「大需要・得意市場でのプレゼンス向上」「生産財タイヤ事業の拡大に向けた戦略」を掲げている。

 グローバルOE市場への注力では、ポルシェやメルセデスベンツなどの世界のカーメーカーへの新車納入を増加させた。

 日系カーメーカーのグローバル生産に対しては、コンチネンタル社との提携を終了したことで、当社独自に対応することができるようになり、さらなる事業強化を図ることが可能となった。

 大需要・得意市場でのプレゼンス向上については、イングランド・プレミアリーグの「チェルシーFC」とのスポンサー契約が2年目を迎え、グローバルでの認知度が向上しており、特に、欧州・アジアを中心に販売に寄与している。

 また、昨年から「全日本スーパーフォーミュラ選手権」のオフィシャルサプライヤーになった。このようなモータースポーツを通じて、高い開発力・技術力をアピールすることができた。

 生産財タイヤ事業の拡大に向けた戦略では、オフハイウェイタイヤメーカーであるATGを買収した。これにより、当社のタイヤ事業の収益力の安定化・強化を図り、様々なシナジー効果を生み出す計画だ。

 MB事業戦略については「自動車部品ビジネスのグローバル展開」「得意の海洋商品でNo.1カテゴリーの拡大」「グローバルでの建機・鉱山ビジネス強化」「独自技術を応用した新規事業の拡大」を掲げている。

 自動車部品ビジネスのグローバル展開では、ヨコハマラバータイランドで、トヨタ自動車向けのオイル供給用ホースの生産を開始した。

 得意の海洋商品でNo.1カテゴリーの拡大では、14年に買収したイタリアのマリンホース生産販売会社であるヨコハマ工業品イタリアが、横浜ゴムブランドのマリンホース「シーフレックス」の生産に関して国際認証を取得した。

 グローバルでの建機・鉱山ビジネス強化では、資源開発国での大規模な資源運搬用に、耐摩耗性に特化したコンベヤベルト「タフテックスα」を開発した。

 独自技術を応用した新規事業の拡大では、岩谷瓦斯と共同で開発した耐圧82MPaの水素ホース「アイバーHG82」の販売を開始した。

 技術戦略では、旭川市に「北海道タイヤテストセンター」を開設。今まで以上に高速での評価が可能になった。9月には米国ノースカロライナ州にタイヤ研究開発センターを開設し、大需要地域である北米での研究開発機能を強化した。

◆17年の取り組みは

 GD100フェーズⅣの最終年となる今年は、タイヤ・MBそれぞれの事業戦略の目標達成を図っていく。

 タイヤ事業ではグローバルOE市場への注力を図り、欧州でのプレミアムカーへの納入促進とともに、北米・中国・アセアンを中心に、カーメーカーへの新車装着を加速させる。

 補修用タイヤ市場向けでは、ここ数年で最も積極的な新商品投入を行う予定。日本・北米を始め、全世界で様々なカテゴリーの新商品を発売する。

 大需要・得意市場でのプレゼンスを向上させていくため、チェルシーFCによる世界的な認知度向上をさらに図る。

 SUVが好調な北米で現地のタイヤ研究開発センターを活用し、北米向け商品のラインアップ強化を図り、拡販を行っていく。

 生産財タイヤ事業の拡大に向けた戦略では、ATGの高い成長力・収益力・ブランド力を生かし、農機タイヤ市場の開拓を進めるなど、オフハイウェイタイヤ市場でのシェア拡大を図る。

 トラック・バス用タイヤ、鉱山、建設機械用のタイヤについては、商品の拡充に努めるだけでなく、タイヤメンテナンスを目的としたICTの活用を進めていく。

 MB事業に関しては、インドネシア・バタム島の海洋商品の新工場での国際認証の取得による本格的な稼働や、長野工場の統合などにより、さらなる競争力の向上を図る。

 また、ホース配管分野では、海外自動車市場への取り組みを強化し、事業拡大を進める。これらの施策の遂行により、MB事業の全社売上比率の向上を目指す。

(アングル)
 野地社長は10月13日に100周年を迎えるにあたり、100周年ロゴを作成したことと、新たなビジョンを掲げることを明らかにした。それを基に、独自の存在感を持つグローバルカンパニーを目指し、さらなる成長を遂げる次の100年をスタートさせる考えだ。

 

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