住友ゴム タイヤセンシング技術を開発

2017年05月18日

ゴムタイムス社

 住友ゴム工業は5月16日、タイヤの回転により発生する車輪速信号を解析することにより、路面の滑りやすさやタイヤにかかる荷重などの情報を検知するタイヤセンシング技術「SENSING CORE」を開発したと発表した。

技術説明会前にあいさつする執行役員オートモーティブシステム事業部長の吉岡哲彦氏

技術説明会前にあいさつする執行役員オートモーティブシステム事業部長の吉岡哲彦氏

 新開発した「SENSING CORE」はタイヤ空気圧低下警報装置「DWS」で培った技術をベースに、それをさらに進化、発展させて生まれた技術で、追加のセンサーを必要とせず、既存の車輪速信号を使ってソフトウェアで検知するため、安価でメンテナンスフリーなのが特徴となっている。

技術説明を行ったオートモーティブシステム事業部DWSビジネスチームの川崎裕章氏

 当日開催された技術説明会で、執行役員オートモーティブシステム事業部長の吉岡哲彦氏は「自動車メーカーを初めとして、自動運転に向けた技術開発が活発になってきている」とし、「こうした動きの中、DWSを進化させ、走行中の路面の滑りやさやタイヤ1輪にかかる荷重を、ハードウエアなしでリアルタイムで検出する技術を開発した」と新技術を紹介した上で「今後、様々な事象、用途での拡大を考えている。こうした開発で今後の自動車技術の進化に貢献していきたい」と話した。

タイヤメーカーとしての環境貢献は「原材料」「低燃費性」「省資源」の3つのカテゴリーがある

 技術説明を行ったオートモーティブシステム事業部DWSビジネスチームの川崎裕章氏は、まず今回の技術のベースとなたDWSの概要について説明した。DWSは車両速信号を利用して、タイヤの空気圧低下を検知する独自技術で、車輪速信号から空気圧の低下を推定・検知する「間接式」を採用しているため、タイヤバルブなどに圧力センサを内蔵し、空気圧を直接計測する「直接式」と比べてソフトウエアのみで検知することなどから、安価でメンテナンスフリーというメリットがあるという。DWSは1988年に基本コンセプトが開発され、1997年に北米向け車両に初採用。累計搭載台数は2500万台になることが紹介された。

タイヤに関する知見と車両速信号の解析技術をさらに進化融合させた「SENSING CORE」

タイヤに関する知見と車両速信号の解析技術をさらに進化融合させた「SENSING CORE」

 また、「自動車の安全にかかわる技術は、自己の被害を軽減する「エアバック」や「衝撃吸収ボディ」などのパッシブセーフティーから、事故の発生を回避し、さらに運転を支援する「クルーズコントロール」や「レーンキープアシスト」などのアクティブセーフティーに変わってきている」とし、「今後「周囲環境認識」や「自車状態認識」などの自動運転における技術的課題に、センシングは欠かす事のできない技術になる」と説明した。

「路面の滑りやさ」検知の検知4ステップ

 そして、「SENSING CORE」については「路面との唯一の接点であるタイヤは自動車の性能や安全性に大きな影響を及ぼすコア製品の一つで、そんなタイヤだからこそ判る様々な情報を検知するコアとなる技術。空気圧の低下以外に、様々な情報を検知する全く新しいセンシング技術になる」と紹介した。
 具体的には車輪速信号を解析・統計処理することによって、タイヤの空気圧低下のみならず、「路面の滑りやすさ」や「タイヤにかかる荷重」などをリアルタイムに推定することが可能となる。

周波数特性の変化を前後・左右のタイヤで比較することで4輪それぞれの荷重配分を推定できる

周波数特性の変化を前後・左右のタイヤで比較することで4輪それぞれの荷重配分を推定できる

「路面の滑りやすさ」を検知することにより、見た目ではわかりにくいアスファルト上に氷の膜ができたブラックアイスバーンの検知やハイドロプレーニング現象が発生する前にグリップ力が低下していることを検知し、警告するといった利用方法や、多くの搭載車両からビッグデータとして収集・分析し、路面情報としてドライバーに発信していくことサービスなどが想定されている。「スリップが発生する前に、通常走行の状態で、路面の滑りやすさやグリップ力の低下をドライバーに提供できる」と川崎氏はメリットを強調した。
 一方、「タイヤにかかる荷重」を検知することにより、制動力配分の最適化やレーンキープやレーンチェンジの際の車両姿勢の安定化などの用途展開が考えらるという。
 検知システムの特徴として「既存タイヤを利用可能で追加センサも不要、ソフトウエアによる検知のため、メンテナンスフリーで高耐久性などユーザーフレンドリーなシステムであること。走行中、ブレーキを踏む前に検知できることから、様々な制御へ応用可能で、夏・冬タイヤ、摩耗したタイヤなどどのようなタイヤでも検知できることから、高汎用性も備えているのこと」をあげた。
 製品化については、現在、自動車メーカーに提案している段階だとし、「2020年までに製品化採用を目指し、さらに進化させていきたい」と期待を寄せた。
 最後に川崎氏は「今後急速に進むであろう自動運転を含めた未来のクルマ社会に向けて、当社ではタイヤメーカーとしてタイヤ開発にあらゆるデータを活用し、タイヤメーカーにしかできないセンシング技術を進化させ、さらなる安全・安心をお届けしたい」と説明を締めくくった。

「SENSING CORE」技術を搭載した車両のデモ走行を行った

 技術説明会の後に、「SENSING CORE」搭載車両のデモ走行を別室からモニタリングした。
 路面の滑りやすさを検知する様子では、低μ路の検知、左右で滑りやすさの異なる路面の検知の他に、タイヤにかかる荷重を検知するため200キロの重りを積載し、タイヤにかかる荷重の検知、タイヤ1輪を減圧させ、空気圧の低下の検知するデモ走行を、リアルタイムで画面により見学することができた。

モニタリング画面滑りやすい路面を検知すると赤い表示に切り替わる

重りを載せる前の車両は2090kgの表示:車両イラスト中央部分

200キロの重りを載せると2290kgになり、車両重量に反映された

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