新春トップインタビュー ブリヂストン 

2012年02月02日

ゴムタイムス社

ブリヂストン 荒川 詔四社長 -2012年1月1日号掲載-

環境対応商品充実図る 事業活動に沿うCSRを実践

2013年以降は年率5%超の成長を目指す

 ブリヂストンの荒川詔四社長は昨年11月30日、東京・中央区の本社で記者会見し、2011年を振り返るとともに、経営の中核に位置づけるCSRについての考え方について言及した。荒川社長は「事業活動に沿ったCSR活動を実践すると明言。グループ各社のCSRに関する課題を「より進捗させるために活動の透明性を高めていく」などと語った。

 ―2011年を振り返っての感想は。
 荒川社長 円高の進行や原材料価格の高騰など不安定な状況が続き、東日本大震災の発生やタイの大洪水など自然災害に見舞われた一年だった。当社にとっては、2011年が創立80周年の節目の年で、毎年ローリングは行っているが新たな中期経営計画を策定した。
 市場環境は大変厳しい状況で推移したが、計画に沿って2012年にはROA6%の達成を目指したい。
 ―中期経営計画2011の内容は。
 荒川社長 新中計の「MTP2011」は、対象年度を2012年から2016年までの5年間とし、一昨年の中計策定時点からの事業環境の変化を反映し、必要と考える戦略・施策を追加・更新することで新たに策定した。
 戦略商品拡大・販売ミックスの良化、合理化努力の最大化、徹底した資産のスリム化の各カテゴリーに含まれる個別施策を無駄なく、戦略的方針の下、確実かつタイムリーに推進し、2012年にROA6%を達成させたい。また、2013年以降も「更に上」を目標に、着実にROAを改善させる計画だ。
 具体的に「更に上」を目指す取り組みは、土俵を変える取り組みを進めていくことだ。土俵を変える取り組みは、当社グループのあらゆるリソースを駆使して他社に対して大きな優位性を確保する戦略。
 ―具体例な施策は。
 荒川社長 先ずタイヤ戦略商品・事業の拡充、次に基盤競争力の更なる向上、さらにサプライチェーン全体での競争力強化につながる施策など。サプライチェーンの縦への広がりでは、サプライチェーンの上流において、タイヤの性能・コストを原材料レベルから最適化し、下流における財別の販売施策につなげること、グローバルな横への広がりでは中国やインドなど新興国市場におけるタイヤ事業の拡大、当社グループの収益向上に向けた成熟国市場における事業展開など。多角化事業では引き続き「選択と集中」を実施し、環境活動、環境対応商品の一層の拡充などを進める。
 ―数値目標は。
 荒川社長 2012年の売上高は3兆6000
億円で、13年以降は年平均5%超の成長を見込む。
営業利益率は2012年に2700億円、13年以降は年平均0・5%以上の改善、16年には営業利益率10%を目標とする。営業利益の増加要素を申し上げると、2009年から12までで、戦略商品が670億円の拡大、多角化事業は330億円の拡大。
 ―CSR活動が重要だと指摘されましたが。
 荒川社長 最近は不確実性の時代であり、組織としてのCSRと従業員一人ひとりのCSR、この2つの活動を両輪に活動のレベルアップを図ることが重要だと認識している。当社グループはCSR活動を推進するため、2007年に「CSR22の課題」を定めた。そして実践するための方向性、取り組み方法をインストラクションとして展開、さらに社会からの要請事項の変化を織り込み、定期的な改訂を加えて活動を進めている。
 CSRの取り組みは広範囲におよび、一人ひとりの意識を高め、徹底させるもので、ハードルは大変高いものである。常に行動し、継続していくことが必要だと思っている。グローバル展開におけるCSRの位置付けは、各事業体がバラバラに経営するのではなく、チームとして整合性のある戦略を進めることが大切であり、この点がここ数年の間で改善、基本方針のもとに事業が動くようになり、CSRの質の向上も図られつつある。
 国、地域によって味付けが異なる面はある。しかし、どのSBUでも規定演技に自由演技を加え、各事業体に合った活動を進めていくことで、さらに前進させていきたい。
 ―CSR22の課題とは。
 荒川社長 社会からの一般的な要請事項から「社会にとっての重要性」「ブリヂストングループにとっての重要性」「ブリヂストングループの取り組み状況」の3つの観点で課題を抽出・整理し、07年にCSR「22の課題」を設定した。09年からは「22の課題」それぞれについて定めた、あるべき姿の実現に向けて目標や方向性、取り組み方法を「インストラクション」という形でまとめて展開。そしてインストラクションに基づいたCSR活動を、中期経営計画の目標達成に向けたPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルの中に織り込んで、取り組みを進めている。
 ―基盤のCSR活動で、11年以降の主な計画は。
 荒川社長 とりまく社会情勢や環境とその変化を踏まえて、中期経営計画に沿って、新しいビジネスモデルの展開や経営効率の向上につながる事業再編などに取り組み、収益確保を目指す。また、ブリヂストンと国内グループ会社を対象に①従業員一人ひとりへの教育・啓発活動の継続・強化②定期的な情報発信と啓発ツールの展開③管理職への研修強化、一般従業員向け階層別研修の継続などを行う。
 このほか、グループ全体でのリスク洗い出しの継続や「全社管理リスク」対策の推進状況管理と定期見直し、海外SBUのリスク管理体制の強化、国内製造系グループ会社のBCP策定、ブリヂストンの全社緊急事態対策室および本社・小平・横浜現地対策本部にて訓練の実施など幅広い。
 ―震災対応は。
 荒川社長 大地震発生時の事業継続性を確保するため、従業員の安全を守る緊急地震速報受信設備の導入、事業継続に向けた部門ごとの対策本部設置、運用の訓練を実施している。本社地区では従業員が徒歩で帰宅することを想定した徒歩帰宅訓練等を行っている。
 昨年3月にに発生した東日本大震災では、これらの訓練が功を奏し、あらかじめ定めた手順に従って従業員が混乱なく行動できたと思っている。本社ビルでは、従業員が日常の訓練に従って歩きやすい靴とヘルメットを着用し、来社されていたお客様へのヘルメット貸し出しを行い、安全確保に努めた。
 震災当日、首都圏では大規模に公共交通機関が止まったことにより従業員の帰宅に影響が出たが、帰宅可能と判断した従業員には水と食糧を提供し、安全に帰宅させたほか、帰宅できなくなった従業員にも水、食糧を提供し、社内で安全を確保することができた。

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