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2012年02月01日

ゴムタイムス社

横浜ゴム 野地 彦旬社長 -2012年1月1日号掲載-

中国でホース生産工場新設 MB事業のグローバル展開強化

ロシア工場が稼働で本格的量産体制に

 昨年12月からロシア工場が稼働し、さらなるグローバル化を展開していく横浜ゴム。野地彦旬社長に昨年最終年度の「GD100フェーズⅡ」の進捗状況を聞いた。

 ―11年を振り返って。
 野地社長 2011年は東日本大震災の影響が大きかった。当社の工場は関東に5つあり、その中で茨城工場は一部、建物と機械が損害を受けた。しかしながら、大きな被害はなく済んだことが幸いだった。また地震が起きてからの工場や販売会社の初動が非常に早く、対応も的確だったことは高く評価したい。今回、現場のポテンシャルが非常に高いことも再認識した。
 一方、サプライチェーンの混乱による大幅な減産の影響があった。具体的には、タイヤでは3月、4月では、約32万本の影響を受け、MBでもだいぶ足をながく影響を及ぼした。その上、タイの洪水で影響を受け、建機においても、中国の財政引き締めがあり、なかなか物が動かないところになっている。
 震災後の状況は、復興需要に支えられて国内の需要の回復は非常に良かった。ただし、下期は対前年比120%の伸びがあったというものの、上期をプラスすると対前年比横ばいが現状。また世界経済を見ていくと、欧州各国の財政問題や米国の雇用停滞など実態経済に非常に影が差し、為替の円高は予断を許さない状況である。こうした環境下、原材料の高騰と円高の影響を受けて、中間決算では残念ながら増収であったが、減益という結果となった。今後の我々の取り巻く環境は依然として厳しいと言わざるをえない。
 これに対して、当社の内部改善などをさらに進めていく必要がある。さらに昨年はフェーズⅡの最終年であり、いろいろな打ち手をしてきた。タイヤ事業では、新ブランドのブルーアースを発表し、フラッグシップタイヤとなる「ブルーアース1」、ミニバン用の「ブルーアース RV01」を発売開始した。先ほどのモーターショーでも説明したブルーアース商品の中核商品になるブルーアースエースを追加投入した。ブルーアースでは、すでに欧州では販売を開始。今後は中国、北米でも販売し、グローバルブランドとしての展開を図っていく。
 ―増産計画については。
 野地社長 新興国を中心とした需要の拡大に対し、小規模工法のメリットを活かしつつ、日本、タイ、米国、フィリピンでの増強を図ってきた。その上、ロシアの工場を稼働の準備をしてきた。残念ながら、ロシア工場の準備が遅れてきたものの、なんとか12月に生産にこぎつけることができた。
 国内外の生産能力は、フェーズⅡのスタート地点の2009年と比較すると10%以上の能力となっている。具体的には、日量約17万本、年間生産は約5500万本まで能力拡大している。またロシア工場の稼働が遅れたが、量産に向けてしっかりと軌道に乗せ、ロシアへのさらなる販売強化につなげていきたい。
 MB事業では、「グローバル展開」と「新規事業の開拓」を大きなテーマとして取り組んできた。
 「グローバル展開」では、中国・上海にMB製品の販社を設立し、そのほか高圧ホース生産工場の新設を決定し進めている。すでに進出している米国、北米などを合わせて、グローバル展開を図っている。
 「新規事業の開拓」では、弊社が養ってきたコンパウンド技術・高分子技術を応用したLED、ソーラーパネル、情報端末などの電子電材分野への進出を計画し、専門部署として電材事業部を昨年の4月に設立した。
 他にも新規事業への取り組みの一環として、介護福祉分野に対しても車いす用の除圧機能付きエアークッション「メディエアーワン」に参入しており、今後はより多くのユーザーに使用して頂けるように展開していきたいと思っている。
 ―CSRへの取り組みは。
 野地社長 「社会からゆぎない信頼を得ている地球貢献企業になる」を宣言し、ISO26000に基づいた7つの重点課題を設定した。これに基づいた環境経営の推進を全グループで取り組んでいる。また東日本大震災の復旧に向け、当社は直ちに支援物資の搬送を行い、今でも継続している。さらに従業員をボランティア活動として、被災地に送ることで支援活動を継続的に取り組んでいく。
 ―2012年の取り組みは。
 野地社長 2012年度から1~12月決算期となるため、すぐに新年度のスタートを迎えることになる。また決算期の変更に伴い、現在GD100中期計画のフェーズⅢを策定中である。フェーズⅢについては来春には紹介したい。
 足元をみると、欧州債務問題が新興国にも悪影響を及ぼし始めている。景気の後退のリスクは一段と高まりつつあるといってもよい。為替の円高や原材料価格高騰のリスクなどの不透明な状況が続くなかで、GD100の最終目標である「売上高一兆円、営業利益1000億円」に向けて、フェーズⅢでも更なる成長を目指していく。2012年については、情勢をみながら臨機応変に対応できるよう、あらかじめ、ケースを想定した対応を準備して取り組んでいく。
 事業の面では、経済環境の変化が激しいなかではあるが、現在進めている能力増強を計画通りに進めていくことが最重要ポイントとなる。
 とくにロシア工場について、準備が遅れてはいたが、12月より生産をスタートとし、今後は本格的量産体制にスムーズにいけるようにフォローをしていく。そのほか、フィリピン工場の拡張が順調に進んでいる。またタイ、中国などの能力増強も進めている。
 一方、販売力が備わっていながら供給拠点がない地域については、今後も成長性を踏まえながら、地産地消が可能になるように体制準備を検討していく。
 MB事業に関しては、現在、国内と海外の販売比率7対3であるが、近い将来これを5対5になるようにグローバル化を進めていく。今回、中国の杭州、高圧ホース生産を主とした工場を建設し、MBの海外展開を実現させるためには、今まで以上に本格なマーケティングの必要性を感じる。当社の商品を松竹梅に例えると、当社の商品は松しかない。特に高圧ホースを中核として、市場にあったものをどうやって準備するかいうことが課題になる。
 最後に、今年は震災によるさまざま影響に対処しながら、南雲会長よりバトンを引き継ぎ、あっというまに半年が過ぎた。2012年も経済環境が不透明な状況が続くが、GD100達成に向け、国内での事業基盤を強固なものにしつつ、並行してグローバル化も進めていく。そのためにはグループ全体でグローバル人材の育成が急務だと考えている。真のグローバル企業になるためには、外国人の新規採用の拡大に対応、適材適所の人材配置ということを含めて、人材の育成に取り組んでいきたい。

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