横浜ゴム2013 年頭所感 野地彦旬社長

2013年01月16日

ゴムタイムス社

 2012年の米国経済は、個人消費が緩やかに増加し回復基調が続きましたが、2013年に予測される「財政の崖」を巡る先行き不透明感から、設備投資や生産に勢いが見られませんでした。欧州経済は債務問題の悪影響が周縁国からコア国へと波及し緩やかな後退が続き、また中国経済も欧州向け輸出の落ち込みなどにより、成長ペース減速の度合いが強まりました。一方、我が国経済は、上期は復興関連需要などにより堅調に推移しましたが、下期に入り海外経済の減速により景気は弱含みで推移しております。
 こうした中、タイヤ事業は国内新車用が好調な自動車販売により売上を伸ばしましたが、市販用は、上期は堅調に推移したものの下期に入って復興需要の反動で販売が伸び悩み、海外の販売に関しては年間を通じて弱含みで推移しました。一方MB事業ではホース配管、自動車用シーリング材などが好調に推移しました。こうした中、2012年度決算については売上高、利益共に過去最高を見込んでおります。
 当社は2012年度から、「グランドデザイン(GD)100」の「フェーズⅢ」をスタートさせました。タイヤ成長戦略として「大規模投資による供給能力の増強」「高付加価値商品のグローバル展開」を掲げております。供給能力の増強では、2011年末より稼動したロシア乗用車用タイヤ工場の開所式を5月に開催、また3月には、インドでの乗用車用タイヤ工場建設計画を発表しました。高付加価値商品の展開も着実に進め、新商品としてウェット性能に優れた低燃費タイヤ「ブルーアース・エース」、低燃費性能を高めたSUV用タイヤ「ジオランダーSUV」、当社歴代最高性能を自負するスタッドレスタイヤ「アイスガード・ファイブ」を発売しました。また8月には中国のORラジアルタイヤ専門メーカーとの間で、同社への技術供与と同社でのOEM生産について合意いたしました。
 MB成長戦略では、「3つのコア技術からナンバーワンを目指す」「新規技術によるビジネスチャンスの創出と拡大」を掲げています。2012年も、グローバルな成長性を秘めた通信、電子、電気分野向けに「フイルム用ハードコート材」「リチウム電池パック向け接着剤」を発売しました。またゴルフ事業では、9月から新商品「iD nabla」シリーズの販売を開始しました。
 「CSRへの取り組み」では、4月、岩手県大槌町で「千年の杜植樹会」を開催しました。津波で大きな被害を受けた東北地方太平洋沿岸300キロに渡って、がれきを利用した森の防潮堤をつくるプロジェクトの、モデル植樹として行ったものです。また5月には、「国連グローバル・コンパクト」に署名し、当社がCSRに取り組む決意と姿勢を世界に表明しました。
 2013年以降、米国経済は緊縮的な財政政策の影響を受けつつも緩やかな回復が見込まれますが、欧州経済は回復の勢いに乏しい状態が続く見込みです。中国経済は景気刺激策の効果や在庫調整が進展していくにつれ、成長率は徐々に高まると見られます。
 一方我が国経済は、上期横ばいの動きが続くものの、海外経済が減速状態を脱していくにつれ緩やかな回復が見込まれ、後半には2014年4月からの消費税8%への引き上げ前の駆け込み需要も予測されます。しかしながら現在日本は、震災復興、近隣諸国との領土問題、TPP参加、脱原発などを巡り様々なリスク要因を抱えており、状況は流動的で予断を許さないものがあります。
 こうした中にあって、当社は「フェーズⅢ」のテーマに掲げた「強くしなやかな成長」の下、環境変化にフレキシブルに対応していく方針です。
 タイヤ事業では、「フェーズⅢ」期間中に約700万本の生産能力増強を目指しており、フィリピン、中国、タイ、ロシアの海外生産拠点の増強とインド新生産拠点設立の準備をしております。また同期間中に約1400億円を投じ約2000万本の生産能力増強を計画していますが、こうした一連の増強計画、新規投資に関しては、状況変化に細心の注意を払い、実施・凍結に関して柔軟かつ大胆に対応していく考えです。また「高付加価値商品のグローバル展開」について、2月からハイパワー・プレミアムカー向け「ADVAN Sport V105」の発売を開始する計画です。
 MB事業では、将来、海外売上高比率を現在の約30%から50%に引き上げる計画です。この目標に向け中国で油圧用高圧ホースの生産拠点設立を目指していますが、当初計画より1年遅れて2014年初頭の操業開始を計画しています。また、グローバルな競争力を高めるため、ホース・アッセンブリーを行っていた平塚東工場を継手金具の製造を行う長野工場に統合することにし、統合作業を2014年度中に完了させる計画です。
 当社の2011年度の海外売上高比率は約47%で、ほぼ半分を日本以外の売上が占めるまでになっています。当社のグローバル化が進むにつれ更に重要度が増すのは人材育成です。私は、将来のグローバル事業は、小さな政府としてのグローバル本社と世界各地域、国々で生産・販売に責任を持つ多数の会社によって行われるイメージを抱いています。今後、幹部・従業員を問わず多国籍化は避けて通れず、そのためにグローバル人材の育成に力を入れたいと考えています。
 私は本年も、直近の状況変化にフットワーク良く対応すると共に、長期的な時代変化への視野も失うことなく全力で取り組んでまいります。皆様に置かれましては、こうした当社の姿勢をご理解いただき、よろしくご支援のほどをお願いする次第です。

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