新春TOPインタビュー 住友ゴム

2012年12月24日

ゴムタイムス社

 ―12年を振り返って。池田社長
 欧州債務問題の影響が世界的に広がりを見せる中、中国、インド、ロシアなどBRICS諸国の成長ペースにもかげりが見られ、アセアン諸国などが堅調に推移する一方で、こうした動きは世界経済全体の先行きの懸念材料となった。国内では、震災復興による設備投資の増加などはあったが、通年では海外経済の影響に加え、円高基調の継続や電力不足などが足かせとなり、個人消費も伸び悩むなど、明るい兆しが見えない年だった。こうした中、高付加価値商品の発売、新興国を中心とした拡販や、合理化による経費削減など、グループ一体となって、収益力の強化に果敢に取り組んだ。
 タイヤ事業については、エナセーブシリーズを業界に先駆けていち早く展開し、カー用品量販店上位2社における低燃費タイヤのメーカー別シェアで2010年、2011年と2年連続No.1を獲得したが、本年2月には、転がり抵抗性能最高レベルの「AAA」を達成したエナセーブシリーズのフラッグシップモデルであるエナセーブプレミアムを発売し、更なるラインアップの拡充を図った。これにより3年連続シェアNo.1達成ができる見込み。
 またタイ、中国、インドネシアでも今年からエナセーブEC503の発売を開始し、エナセーブのブランド展開はグローバルに拡大している。また、現在各国で別々の仕様となっている補修用汎用タイヤを、統一仕様としたアジア専用タイヤのSP TOURING T1を、今年度より中国、インドネシアで発売した。
 来年2月からはタイでも発売する予定。グローバルでのコスト競争力の強化を商品面で図っていく。
 冬タイヤでは新商品WINTER MAXXを8月1日より発売した。
 開発面においては、当社独自の環境対応タイヤである「石油外天然資源タイヤ」や「低燃費タイヤ」の開発を進めてきた。「100%石油外天然資源タイヤ」については2013年の発売開始に向け、「50%転がり抵抗低減タイヤ」開発についても2015年の発売に向けて順調に進んでいる。 また本年10月にはタイヤ製造技術における「超高精度」を追求した次世代新工法「NEO―T01」を発表。今後、この新工法により次世代の高性能タイヤの開発を推進していく。リプレイスの販売体制については、現在の組織は十分に機能しており、変える予定はない。ただ、改善は営業面で進めていきたい。
 グローバル展開の推進について。池田社長 タイヤ需要は今後特に新興国において増加が見込まれるが、中でも需要を牽引しているのはアジア地域のモータリゼーションの中心である中国。中国での需要拡大に対応するため、本年7月に湖南工場を立ち上げた。生産能力は第1期として2013年末に日産1万5000本、第2期では2015年末に日産3万本と当初の拡張計画を2年前倒しで進める予定。
また現在タイ工場を世界最大級の工場へと拡張する計画を推進しており、ブラジル工場は2013年の生産開始へ向けて建設を順調に進めている。 9月には今後更なる拡大が見込まれる中東・北アフリカ・ロシア、及び欧州への供給拠点として、トルコ工場の設立を決定。2015年7月の稼働を目指している。
 さらに農業機械用タイヤとしては当社初の海外工場をタイに建設し、2014年5月の稼働を予定。生産力強化と同時に販売力の強化にも積極的に取り組んでいる。本年8月には今後大きな成長が見込まれるインド市場での市販用タイヤの販売強化を図るため、インドにタイヤ販売会社「フアルケンタイヤインディア」を設立した。

 産業品事業について。池田社長 グッドデザイン賞を受賞した木造住宅用制震ダンパー「MIRAIE」の発売や、車椅子用可搬形スロープ「ダンスロープライトスリム」のラインアップ拡充など、今後、事業としての成長が期待でき、同時に安心して生活頂ける商品を展開した。
 また、成長商材であるファインラバーやクリーンラバーは、ベトナム工場の拡張や加古川工場での増産に取り組んだ。これらの結果、2012年度の業績見通しは11月8日に公表した業績予想である、連結売上高7050億円、連結経常利益:610億円を達成できる見通し。

新長期ビジョン「VISION 2020」について 池田社長
 本年9月、グループの持続的成長に向けて2020年を目標年度にした、新長期ビジョン「VISION 2020」を発表した。当社が目指す姿は、当社の価値観と行動原則である「住友ゴムWAY」をベースに、「高収益・高成長の真のグローバルプレイヤーになる」、そして、「ステークホルダーにとっての価値向上と、全社員の幸せを追求する」こと。
 新長期ビジョンの具体的な数値目標は、2020年度で売上高1兆2000億円、営業利益率12%以上を掲げている。
 
 
 ―2013年の課題と方針は。池田社長
 来年度、当社を取り巻く環境は、一段と厳しさを増す可能性がある。海外では世界経済全体で厳しい状況が懸念される。国内でも来年予定される消費税の引き上げなど、事業活動に大きな影響を与える動きが目前に迫っている。新興メーカーの競争力向上など、これまで以上に国内外で激しい競争が予想される中で、様々な環境変化にスピード感を持って対応していく必要があることは当然だが、それに過剰反応することなく、業界全体の大きな動きにも目を向けていく必要があると考えている。

今年一番印象に残ったこと
 トルコの生産拠点を決めにアンカラまで行ったこと。かなりの強行軍で現地を視察したが、まだまだ体力が続く事とトルコに進出できたことのうれしさが印象に残った。

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