住友ゴム 高純度天然ゴム「UPNR」開発

2013年05月28日

ゴムタイムス社

 住友ゴム工業は5月27日、低燃費、耐摩耗性能に優れた高純度天然ゴム、「UPNR(ウルトラ・ピュア・ナチュラル・ラバー)」の開発に成功したと発表した。
 2014年以降に発売するプレミアム商品の一部に採用していく方針。
 同日、新材料開発技術に関する説明会を都内で開催した。
 今回新開発した「UPNR」は、天然ゴム粒子の外周にある不純物タンパク質とリン脂質を取り除くことで、タイヤ用ゴムとして優れた低燃費性能と高い耐摩耗性能を両立させた全く新しい高純度天然ゴム。
 天然ゴムの不純物を取り除くことにより、カーボンとの相互作用が高まり、極微細領域にまでカーボンが分散するため、低燃費性能が向上する。また、ゴム分子とカーボンの結合が増えることにより、耐摩耗性能の向上も図れるという。
 一方で、不純物を除去することで、これまでゴムを保護していた成分まで除去されるため、そのままでは熱で劣化しやすいことが課題となっていた。
 通常の天然ゴムの製造プロセスでは、タンパク質、リン脂質に囲まれた天然ゴム
粒子を固形化した後、粉砕、水洗浄を繰り返すのに対し、新技術では天然ゴムを化学処理によって切断し、ゴム粒子のみを固めて、特殊処理により不純物を徹底して除去し安定化させることにより、課題であった熱での劣化を改善する事に成功した。
 現在、「UPNR」を製造するパイロットプラントをタイ・チョンブリに建設中。
当初は年間600トンの製造からスタートし、1年以内に1500トンまでの拡張も視野に入れている。
 通常の天然ゴムの水洗処理と比較して、化学処理での切断、除去、特殊技術での不純物の除去と安定化と行程が増えるので、若干のコストアップになるので、当初はプレミアム商品に採用する予定。
 同社の中瀬古広三郎常務執行役員は、「天然ゴム自体の性能を可能な限り引き出し、低燃費性と耐摩耗性双方の性能を、現在の天然ゴムと比較して10%くらい上げていきたい」と述べた。
 なお、同社は2013年度中に100%石油外天然資源タイヤをマーケットに投入する予定となっているが、このタイヤには今回のUPNRは使用せず、従来タイプの天然素材ENR(Evolutional Natural Rubber)を用いる。
 今回開発された「UPNR」には、同社が2011年に完成させた新材料開発技術「4D NANO DESIGN」によって解析された。
「4D NANO DESIGN」は、通常使う3Dに時間軸を加えた4つの次元で解析し設計するナノレベルの材料開発技術。
 この技術を合成ゴム、シリカ、カーボンに適用して新材料開発を進め、低燃費性能で「AAA」を獲得した低燃費タイヤ「エナセーブPREMIUM」、高い氷上性能を持つスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX」、トラック・バス用の低燃費オールシーズンタイヤ「エナセーブSP688」等に採用してきた。
 今後はシミュレーション技術の更なる進化を図るため、次世代スーパーコンピューター「京」を活用し、2015年にはアドバンスド4Dナノデザインを完成させ、2016年以降に発売する商品に採用する予定。「これまで以上に高機能材料をタイムリーに開発し、高機能タイヤに更なる付加価値をプラスした商品の開発を加速させいく」(中瀬古氏)としている。

挨拶した中瀬古広三郎常務執行役員

挨拶した中瀬古広三郎常務執行役員

技術説明を行った若林昇材料開発本部 材料第三部長

技術説明を行った若林昇材料開発本部 材料第三部長

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