やさしいタイヤ材料のはなし その⑧

2014年03月08日

ゴムタイムス社

トレッドゴム①

 本稿の第1回に、自動車ができてから100年ほど経ってようやくタイヤができた。1888年にジョン・B・ダンロップが自転車用に空気入りタイヤを実用化したのがタイヤの始まりと書きましたが、読者からの質問があり、説明が舌足らずであったことに気が付きました。
 ここでは、空気入りタイヤの意味でタイヤという言葉を使いました。グッドイヤー社のホームページによれば、車輪の外周にゴムを取り付けただけのソリッドタイヤが発明されたのが1835年となっており、ゴムを貼りつけたタイヤは空気入りタイヤが実用化される50年ぐらい前から自動車用に使われていたことになります。ソリッドタイヤに取り付けられたこのゴムの輪こそが、今回お話しするトレッドゴムの原型です。因みに、グッドイヤーによって加硫法が発明されたのは1839年ですから、最初に車輪に取り付けられたゴムは未加硫ゴムであったと思われます。
 それではソリッドタイヤが発明される以前はどうであったかというと、車輪の外周にゴムではなく、鉄の輪をはめ込んだものが2000年ぐらい前から使われていたそうです。鉄の車輪で高速道路を走ることを想像してみてください、スリップが怖くてとても『高速』では走れないでしょう。私たちが安心してクルマを運転できるのは、タイヤがゴムでできているためで、ゴムと路面との間の摩擦力が大きいからです。この摩擦力がクルマの、走る(駆動力)、曲がる(グリップ力)、止まる(制動力)の源になっています。
 それでは、何故トレッドにゴムを使うと摩擦力が大きくなるかというと、ゴムは金属やプラスチックに比べて桁違いに軟らかく、タイヤが路面に接したときにトレッドゴムは、路面の凸凹に追従できます。このために、接触面積が大きくなり大きな摩擦力が得られるのです。これを凝着(粘着)摩擦といいます。更に、ゴムにはもう一つヒステリシス摩擦というゴム特有の摩擦発生メカニズムがあります。
 例えば、凍結した路面においては、ブレーキをかけた時など、タイヤと路面との間に水が発生するために、水膜に邪魔されて、トレッドゴムと路面との接触面積が減少し、凝着摩擦はゼロに近くなりますが、ヒステリシス摩擦は凸凹さえあれば発生します。しかし、ミラーバーンと呼ばれる鏡面状の凍結路面では、路面の凸凹も少ないために、ヒステリシス摩擦力も小さくなりツルツル滑るのです。

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