やさしいタイヤ材料のはなし その⑩

2014年05月17日

ゴムタイムス社

サイドゴム

 タイヤの側面に位置し、トレッドゴムとビード部をつなぐのがサイドゴムで、サイドウォールゴムとも呼ばれます。タイヤをクルマに装着した時、トレッドゴムはフェンダーで、ビード部はリムで隠されているのに対し、サイドゴムは常に見える位置にあり、タイヤの中で最も目立つ部分と言えます。そのためサイドゴムにはメーカー名、ブランド名およびタイヤサイズなどが表示されています。タイヤサイズは、例えば「205/65R15 94H」と表示されていれば、最初の205はタイヤ幅、65は偏平率(%)、Rはラジアル構造、94はロードインデックス(タイヤ1本が支えられる最大負荷能力)を示しています。そして、最後のHはそのタイヤが許容される最高速度を記号で表わしており、Hは210km/h、Vは240km/hを示します。つい先日、ある人から、ドイツに出張したときに乗せてもらった車が250km/hでアウトバーンを飛ばすので、タイヤがバーストしないかヒヤヒヤしたという話を聞きました。250km/h以上で走行するためには、この速度記号が、W(270km/h)あるいは、Y(300km/h)などの表示があるタイヤの装着が必要です。クルマに乗る前に、WあるいはYの文字を確認していれば少しは安心して乗れたかもしれませんね。
 さて、サイドゴムの働きとしては、その内側にあるインナーライナー及びプライを保護する役目があります。従って、縁石に接触するなど、外力を受けたときにカット傷などができにくい特性がサイドゴムには求められます。また、サイドゴムは、路面の凸凹によって撓(たわ)んだり、伸びたりと大きな変形を受けるため、小さなひび割れ、傷などを起点として亀裂が広がりやすく、亀裂成長を抑制する特性も備えていなければなりません。そこで、耐カット性、耐亀裂成長性を改善するためにサイドゴムには、ブタジエンゴムが天然ゴムにブレンドして用いられることが多く、加硫結合様式としてはポリサルファイド(「加硫とタイヤ部材間の接着」参照)が適していると考えられています。更に、サイドゴムは伸びたり縮んだりの変形を繰返し受けながらオゾンにさら(曝)されるために、表面が劣化してクラックが発生し易くなります。サイドゴムにはこのようなオゾン劣化への対策として、ワックス、老化防止剤が他のゴム部材よりも多く配合されています。
 ここで、ワックスはタイヤの表面に染み出してきて、物理的にタイヤ表面を覆うことでオゾンの攻撃からサイドゴムを護り、老化防止剤はオゾンがゴム主鎖の二重結合を攻撃して主鎖切断するのを防ぐことでサイドゴムを護ります。このオゾン劣化に対してはアミン系の老化防止剤が効果的に働くのですが、サイドゴムの表面に染み出してきて、オゾンの攻撃からゴムを護る一方で、酸化して茶色に変色するためサイドゴムの美観が損なわれ、外観不良の問題が起きる場合があります。この外観不良の対策としてEPDM(エチレン―プロピレン―ジエン3元重合体)のように二重結合が少ないためにオゾンの攻撃を受けにくく、老化防止剤の配合量を減らしてもオゾン劣化が起きにくい種類のゴムの応用も検討されていますが、耐亀裂成長性が悪いという欠点があり、実用化には課題があるようです。

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