やさしいタイヤ材料のはなし その⑫

2014年07月13日

ゴムタイムス社

ゴム用原材料①-2

 一方で人工天然ゴムであるIRにはシス-1,4以外の結合様式が若干あるため伸長結晶性が劣り、高い破壊強度が必要な用途ではNRに置き換えることができません。
 同様に、BRは炭素が4個、水素が6個からなるブタジエンモノマーが連結したポリマーで、1,4-シス構造、1,4-トランス構造及び1,2-ビニル構造の三つの結合様式を持ちます。BRの場合にもシス-1,4構造の比率を高めるほど耐摩耗性、耐屈曲性に優れた特性を示しますが、これもシス1,4構造の部分が重なり合って結晶化するためと考えられています。

 さて、タイヤ用途で最も使用量の多いSBRは、ブタジエン部分がこの三つの結合様式を持つほか、スチレンとブタジエンの比率、あるいはスチレンがブロック状に連結しているかなど分子レベルで異なる構造(これらをミクロ構造といいます)を持ち、これらの組合せによって特性が変化します。タイヤに求められる性能として、耐摩耗性、路面のグリップ力に加え、近年、低燃費性が重要になってきましたが、従来の乳化重合SBR(E-SBR)ではこれらの性能が二律背反の関係にありました。
 そこで、触媒によってミクロ構造を自由に変えることが可能で、ミクロ構造の組合せで二律背反の問題を解決できる溶液重合SBR(S-SBR)が注目され、使用量が増加しているのです。

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