タイヤ各社の中期経営計画 目標達成へ着実に事業を展開

2014年07月28日

ゴムタイムス社

 12月決算のタイヤメーカーにとって、今期の上半期が終了した。

 各社は13年度決算で、いずれも過去最高益を達成。今年度は消費増税前の駆け込み需要の反動が心配されたが、日本自動車タイヤ協会(JATMA)が先日発表した自動車タイヤ国内需要年央見直しでは、新車用・市販用ともに当初見通しを上方修正し、前年度並みの水準になるとの見込みを示している。

 こうした状況を背景に各社はどのような事業展開を図っているのか。各社の経営指針である中期経営計画を改めてチェックした。

●ブリヂストン

 毎年、中計の見直しを行っているブリヂストンは昨年10月、2014年から18年の「中期経営計画2013(2013MTP)」を策定した。

 2013MTPでは、「真のグローバル企業」をめざし、経営改革の質とスピードの向上を図るため、重点項目として「グローバル企業文化の育成」「グローバル経営人材の育成」「グローバル経営体制の整備」の3点を掲げた。

 グローバル企業文化の育成では、ブランド戦略の明確化とイノベーションの促進を図るとしており、その具体的な取り組みとして示されたのが、オリンピック公式スポンサーへの参加。6月に国際オリンピック委員会と公式パートナー契約を調印した。

 一方、グローバル経営体制の整備では、タイヤ事業でSBU体制を再編するほか、多角化事業の拡充、ガバナンス体制の整備、グループ経営をつなぐ役割を強化する方針を示した。

 このうち多角化事業については、「選択と集中」および構造改革を進め、事業間の連携強化、グローバル化の促進、集中事業のさらなる飛躍を図るとしていた。

 その計画に従って、多角化事業のうちの加工品事業では、国内の販売体制を再編するとともに、米最大のホース販売・サービス専門会社の買収で合意。国内外で同事業の強化に着手している。

 なお、2013MTP期間内の量的目標としては、業界平均を上回る成長と、ROA(総資産利益率)6%、OP(営業利益率)10%の継続確保をめざしている。

●住友ゴム

 住友ゴム工業は、2020年を目標年度とする新長期ビジョン「VISION(ビジョン)2020」の達成に向け、13年度を初年度とする3年間の中期計画を定めている。

 中計では15年度に売上高9400億円、営業利益1000億円、ROA10%以上などとする目標を設定。その実現のため、15年までに達成すべき項目を、ビジョン2020で示した3つの成長エンジン「新市場への挑戦」「あくなき技術革新」「新分野の創出」に基づき策定した。

 このうち、新市場への挑戦については、今後大きな需要拡大が期待できる新興市場として中南米・中近東・アフリカ・ロシア・インドを挙げ、この5エリアでの販売比率を13年の11%から15年に14%へ向上させることを目指している。

 その一環として、4月に農業用機械タイヤの新工場をタイに建設し、生産を開始した。

 あくなき技術革新に関しては、低燃費タイヤのさらなる性能向上に努めており、2月には「エナセーブ」の第2世代スタンダードタイヤとして、長持ちする低燃費タイヤをコンセプトとする「EC203」を発売。

 さらに50%転がり抵抗低減タイヤの開発を進め、今秋の発売を目指し、最終チューニングを行っているところだ。

 また「超高精度」を実現する次世代新工法「NEO―T01」を使って開発中の、次世代高性能タイヤ第1弾であるプレミアムランフラットタイヤ「SPスポーツMAXX050ネオ」についても、今年中の発売を目指し、最終チューニングを進めている。

●横浜ゴム

 横浜ゴムは2月に中期経営計画「GD100」Phase(フェーズ)Ⅲの、14年度の取り組みを発表した。

 フェーズⅢは12年にスタートし、14年が最終年度となる。「軽くしなやかな成長」をテーマに、3年間で売上高1兆8000億円、営業利益率1500億円、営業利益率8・3%を目指している。この目標の達成に向け、タイヤとMBの成長戦略を立案した。

 タイヤ事業については、供給能力増強のため、第1次拡張工事が終了したフィリピンで、年初から年間生産能力を1000万本に増強。中国蘇州工場では4月からPCタイヤの生産を開始した。秋にはロシア工場の年間生産能力が現在の140万本から160万本に増強され、インドでも年内に、年間生産力40万本の規模でPCタイヤ工場が稼働する。

 この結果、フェイズⅢの期間内に、タイヤ生産能力が海外で825万本増強されることになり、海外生産比率はフェイズⅡの38%から46%に向上する。全世界での生産能力は、14年に6764万本とする計画だ。

 MB事業については、海外でのホース生産をさらに強化。中国で油圧用高圧ホースの生産を上期に、メキシコでは自動車用エアコンホースの生産を夏に開始する。

 基盤強化のため、秋までに新城物流センターを建設し、国内物流体制の効率化をさらに図る。また、年内に平塚東工場から長野豊岡工場へ設備を移転し、同工場でホースと金具の組み立てまでを行うことでホース配管事業を強化する。

●東洋ゴム

 東洋ゴム工業は6月に「中計’14 GO BEYOND~いまを超えていく」を発表した。

 11年に発表した15年までの5ヵ年計画「中計’11」で掲げた営業利益と営業利益率の目標を13年度で達成し、売上目標についても今年度中に達成する見込みであることから、新たに策定したもの。

 14年を起点とし、5年先のあるべき姿を見据えた上で、中間点である16年に到達すべき目標を設定。具体的な数値として、売上高4700億円、営業利益520億円、営業利益率11・1%、ROA10%以上を掲げた。

 事業分野別の戦略では、タイヤ事業については、同社の強みであるSUV/CUV市場で確固たるブランドポジションを確立することや、トラック・バス用タイヤの製品開発力を強化することなどを挙げた。

 この方針に沿って、日本国内向け大型路線バス専用低燃費タイヤの新商品「NANOENERGY M638」を、8月1日から全国で発売する。

 ダイバーテック事業については、今年度から「自動車ゴム製品」「自動車ウレタン製品」「化工品」の3つのビジネスユニット(BU)に再編。

 化工品BUでは、特に鉄道車両用部品の事業成長に注力し、海外生産比率を35%へ引き上げるため、6月に中国の鉄道車両用部品工場を稼働させている。

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