やさしいタイヤ材料のはなし その⑯

2014年11月22日

ゴムタイムス社

タイヤのリサイクル

 読者の方々も、ゴミ減量のために、分別回収に協力されていることと思います。

 環境省発行の平成26年度環境白書によれば、平成24年度のペットボトルの回収率は90・4%、同様にスチール缶は90・8%、アルミ缶が94・7%、プラスチックは排出量に対する有効利用率が一般廃棄物で約78%となっています。

 それでは、タイヤはどうかというと、平成25年度の日本国内における使用済みタイヤのリサイクル率は88%でした。まだまだ努力が必要ですが、悪くない数字かもしれません。

 さて、タイヤリサイクル率の中身ですが、製紙用などの熱利用が合計で57%、一方で、Reuse(再使用)、Recycle(再利用)は、更生台タイヤ用6%、中古タイヤの海外輸出15%、再生ゴム・ゴム粉10%などを合計して31%でした。

 熱利用の割合が57%と高いのは、タイヤ燃焼時の発熱量が石油同等と高いためです。また、更生タイヤとは、革靴のかかと修理のように、使用済みタイヤのトレッドゴムを新品に張替えたタイヤのことを指し、更生タイヤに使われる使用済みタイヤを台タイヤと呼びます。海外輸出される中古タイヤも、ほとんどが台タイヤとして使われていると思われます。

 次に、マテリアルリサイクルであるゴム粉は、タイヤのゴム部分を機械的に粉砕して得られます。このゴム粉を更に液体窒素で凍結させて粉砕すれば数十ミクロンの微細なゴム粉も得られます。比較的粒度の大きなゴム粉は、レール・枕木の下に敷いて振動、騒音を低減するバラストマット、舗装用アスファルトの改質材及び家屋の屋根やビルの屋上に敷く防水用ルーフィングなどに用いられます。

 一方、凍結粉砕した微細なゴム粉はタイヤにも使うことができますが、製造コストが高いため、現在は限られた使用量に留まっています。一方で、加硫ゴム中の硫黄架橋を機械的及び化学的手法で切断して元のゴム分子鎖に戻すことを脱硫といいます。得られたものを再生ゴムと呼びますが、現在の技術では、再生ゴムを製造する際に硫黄架橋ばかりでなくゴム分子鎖本体を切断してしまうため、再生ゴムに新ゴムと同じ性能を期待することはできません。

 日本では戦争中などの物資不足のときには熱心にゴム粉、再生ゴムの研究開発が行われましたが、現在は、あまり盛んではないようです。しかし、ゴム及びゴム製品のISO規格の制定、改正を担当するISO/TC45では数年前から、ゴム粉、再生ゴムの使用量を増やすことを目的に、新しいISO規格ができつつあります。

 環境先進国を自負する日本も、省資源化の観点から、ゴム粉及び再生ゴムの使用量を拡大し、リサイクル比率の向上に取り組む必要あるのではないでしょうか。

関連キーワード: