【新春トップインタビュー】横浜ゴム 野地彦旬社長

2015年01月01日

ゴムタイムス社
  • 野地彦旬
  • 代表取締役社長
  • 横浜ゴム
  • 中計「GD100」最終章へ
  • さらなる生産能力増強を計画
  • 野地彦旬社長

 15年に中期経営計画「GD100」の最終章となる「フェーズⅣ」がスタートする横浜ゴム。フェーズⅣの最終年であり、創立100周年となる17年に向けて舵を取る野地彦旬社長が、15年の取り組みなどを語った。

◆14年を振り返って

 タイヤ事業については、国内新車用タイヤの販売は、自動車生産の増加に支えられ好調に推移した。市販用タイヤは、年初の降雪の影響によりスノータイヤの販売が増加したことや、消費税増税前の駆け込み需要の影響もあり、販売量・販売高ともに前年同期を上回った。

 スノー商戦は、10月までは前年を上回るペースで推移した。11月に入ると北海道・北東北で降雪があったものの、降雪量が少なく、前年に比べ動きが鈍かった。その後の降雪により、一部地域で動きが活発化している。

 海外の販売については、中国や新興国では経済成長が鈍化しているものの、引き続き販売は好調だった。また、欧州でも販売が好調に推移したが、暖冬の影響で冬タイヤの出荷が伸び悩んでいる。

 一方、MB事業では、ホース配管事業は国内を中心に建設機械用ホースの販売が堅調に推移。自動車用ホースは北米での販売が好調に推移し、売上高が前年同期を上回った。工業資材事業は市況が低迷していた海外向けマリンホースの販売は回復したが、コンベヤベルトの海外市場の低迷により、前年同期を下回った。

 スポーツ事業は消費税増税後、駆け込み需要の反動が見られたものの、「エッグ」シリーズが好評で、売上高は前年同期を上回った。

 こうした状況の中、内部改善努力と営業体制の強化、効率化に取り組み、14年度第3四半期決算は過去最高の売上・営業利益・純利益となった。通期についても、売上高・利益ともに3年連続で過去最高を見込んでいる。

◆中計の進捗状況

 14年は当社が12年度から取り組んできた、中期経営計画「グランドデザイン(GD)100」の「フェーズⅢ」の最終年度だった。

 フェーズⅢでは12~14年度の3年間累計で売上高1兆8000億円、営業利益1500億円を目標に、様々な施策に取り組んだ。結果として売上高1兆7963億円、営業利益1693億円を見込んでおり、売上が若干、未達だが、営業利益は計画を上回る見込みだ。

 フェーズⅢでは、タイヤ成長戦略として「大規模なタイヤ供給能力の増強」「高付加価値商品のグローバル展開」を掲げた。大規模なタイヤ供給能力の増強では、中国・蘇州とインドでPC工場を稼働。さらに、フィリピン・ロシアでも生産能力増強を行っている。

 このように、14年度は全社で540億円の設備投資を行い、これにより生産能力は、13年に対し490万本増の6759万本となった。

 高付加価値商品のグローバル展開については、グローバルフラッグシップブランド「アドバン」をはじめとするタイヤが、ポルシェ「パナメーラ」やメルセデスベンツ「GLA」など、多くのプレミアムカーに採用されたほか、ブルーアースシリーズの「ブルーアース―A」などを発売した。

 MB成長戦略では「3つのコア技術から新たなナンバーワン商品を目指す」「新規ビジネスチャンスの創出と拡大」を掲げている。

 この戦略に沿って、米国企業からイタリアのマリンホース生産販売会社を買収したほか、中国・杭州で建設を進めてきた油圧用高圧ホース工場が、下期に量産に向け稼働を始めた。

 さらに、北米で事業を展開する「YHアメリカ」が北米の工業品子会社を傘下に入れ、名称を「ヨコハマ・インダストリーズ・アメリカズ」に変更。米国3州とメキシコに生産拠点を置き、高圧ホース・自動車用ホースなどの生産・販売を行っている。

◆15年の取り組み

 GD100の最終章となる「フェーズⅣ」をスタートさせる。最終年度となる17年には売上高8500億円、営業利益1000億円を達成することが目標だ。

 詳細は今春発表する予定だが、この計画達成に向け、タイヤ事業ではさらなる生産能力増強を計画している。

 そのため、海外生産拠点の増強を継続して実施し、新たな米国ミシシッピ州のトラック・バス用タイヤ工場では、10月から年間生産能力100万本でスタートする。

 こうした一連の増強計画・新規投資に関しては、状況変化に細心の注意を払い、柔軟かつ大胆に対応していく。

 商品についても、アドバンの世界のプレミアムカーへの新車装着の拡大と、ブルーアースブランドのグローバル展開を強化する。

 アイスガードブランドについても、研究開発に力を注ぐため、従来の「ティー・マリー」の4倍の敷地面積となるテストコース用地を旭川に取得し、年末から運用を開始する。

 MB事業に関しては、将来、海外売上高比率を現在の約40%から50%に引き上げる。この目標に向け、インドネシア・バタム島の海洋商品の工場を6月から稼働させる計画で、マリンホースについては日本・イタリア・インドネシアの3生産拠点体制を確立し、さらなる拡販を進めていく。

 韓国のクムホとの提携については現在、超軽量タイヤなどの環境対応技術や、新たなコンセプトのタイヤなどを、それぞれ別のテーマで研究・開発し、それをある時期に合体する形で進めている。

 フェーズⅣの最終年は、創立100周年となる2017年である。まずは、このフェーズⅣのテーマ・事業戦略・財務目標を作成し「企業価値・市場地位において、独自の存在感を持つグローバルカンパニー」を目指したい。

(アングル)
 新興国には小規模で進出し、需要の拡大に合わせて柔軟に生産能力を上げていく手法を採る横浜ゴム。これにより、ロシアやベトナムに日系タイヤメーカーとして初めて進出できたことを、野地社長は強調している。

 

 

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