「自動車技術展・人とくるまのテクノロジー展2015」が5月20~22日、横浜市のパシフィコ横浜で開催された。主催は自動車技術会。ゴム・樹脂関連企業も自動車の軽量化などに寄与する技術を紹介していた。
◆住友理工
住友理工は住友電気工業・住友電装と3社共同で出展した。紹介したのはゴム製シール部材「セル用ガスケット」、独自開発のオールゴムセンサ「SRセンサ」の応用事例としての「接触・押圧・心拍検知」が可能な開発品のデモなど。
今回、初めての出展となったセル用ガスケットは、トヨタ自動車の燃料電池自動車「ミライ」に採用されているもので、燃料電池(FC)内で水素と酸素の流路を保ち、生成された水の排水性を高めるシール部材。これを用いたセルの開発により、FCスタックの高性能化や小型・軽量化を実現した。
SRセンサはすでに健康介護分野で実用化されているが、今回の展示では自動車のシートに応用して、心拍数などのバイタルサインを検知することで、ドライバーの眠気や意識喪失を把握できる可能性があることを示していた。
◆NOK
NOKは摩耗損失を低減するための低フリクション技術を中心に、潤滑技術やFPC(フレキシブルプリント配線板)技術などを紹介した。
低フリクション技術のうち、今回初めて展示したのは「回転用低トルクシールリング」と「エンジンシール低トルク新素材」である。
回転用低トルクシールリングは、オートマチック・トランスミッションのシールリングに、シール媒体である油が流れるような形状を設けることで、大幅な低トルク効果を実現。エンジンシール低トルク新素材は、配合技術によりフッ素ゴムを改良することで、やはり低トルクに寄与するものだ。
また潤滑技術では、やはり今回初めての展示となった「超撥水固体皮膜潤滑油」を紹介。こうした最先端技術により、自動車の進化に貢献できることをPRしていた。
◆住友化学
住友化学は「あしたの地球に会いに行こう」をテーマに、自動車の技術革新と、持続可能な社会の発展への貢献を目指す新技術・新製品を紹介した。
多様な展示のうち「高分子有機EL照明」は、厚さ1・2mmで多彩な色合いと明るさを実現したもので、すでにレストランやバーなどで「装飾照明」として製品化されている。今回の展示では、自動車の室内照明やブレーキランプなどでの応用を提案していた。
また、長期間に渡ってカビの発生を抑制する効果をもたせた「防カビエラストマー材料」は、防カビ成分とエラストマー基材との相互作用を制御することで、防カビ成分を少しずつ表面に放出させるもの。
このほか、金属部品をスーパー樹脂に替えることで自動車の軽量化につながるスーパーエンジニアリングプラスチックなど、多様な技術・製品を紹介し、来場者の関心を呼んでいた。
◆旭化成ケミカルズ
旭化成ケミカルズは、今回は同社グループのプラスチック成形技術のみを集めて展示した。
「デルペット」は、優れた透明性・表面硬度・耐薬品性を持ち「プラスチックの女王」と呼ばれるアクリル樹脂成形材料で、今回が初めての紹介となったのは超耐熱グレードの「PM130N」。従来の「PM120N」に比べ、さらに透明性を向上させていることから、超耐熱性と合わせヘッドライト回りでの利用を提案していた。
また、独自の特殊ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂と、ポリメチルメタクリレート(PMMA)とのポリマーアロイ「エステロイ・ATH30」は、アクリル樹脂の硬くてもろいという欠点を、ポリマーの混合により克服して強度と漆黒性を向上させたもの。すでに自動車の内装材として使われている。
◆澤久工業
ホースクランプ専門メーカーの澤久工業は、輸入販売を行っている「トライドン」と「アイディール」の高圧ホース向けクランプを中心に展示を行った。
これは、自動車メーカーが軽量化のため、エンジンの排気量を小さくしてターボチャージャーを搭載するようになっていることに対応することと、これまであまり取引のなかった建機分野を開拓するためだ。
中でも、トライドンの「ウェーブ・シール」は、従来のクランプに比べ、厚く広い上に内側にライナーを施していることが特徴だ。このライナーがスプリングの役割を果たすことで、急激な温度や圧力変化によるゴムホースの膨張・収縮に対応することができる。
すでに欧米自動車メーカーのターボエンジンに採用されていることも、アピールポイントとして挙げていた。
◆丸五ゴム工業
丸五ゴム工業は、岡山県産業振興財団の次世代自動車技術研究開発プロジェクトの参加企業の1社として出展。今回はサクションブロー製法による製品の受注拡大を目指してPRを行った。
同社はサクションブロー設備を導入し、今後2つの案件の量産化がスタートするが、稼働率を向上させるため、受注拡大を図ることになった。
サクションブローの特徴は耐熱性樹脂が使え、長尺曲がり管が成形でき、肉厚寸法制御に優れ、成形サイクルが短いこと。他の製法に比べ、特に重量とコスト面で優位性がある。また同社が販売を行っている、オーストリア製のクイックコネクターを付けることも可能だ。
ブースにはターボチャージャーのインタークーラー配管を展示し、自動車メーカーの担当者を中心に技術をPRしていた。
◆リケンテクノス
リケンテクノスは機能性ゴム代替TPVやE触感エラストマーシートなど、自動車分野に新たな価値を提供する製品や素材などを出展した。
機能性ゴム代替で、今回が初めての出展となったのは高耐油性TPVの「アクティマーK」。エンジンオイル中のOリングなどとしての利用が考えられており、現在、サンプル出荷中だ。
EPDMゴム代替TPVは、EPDMより軽いため、自動車の軽量化に寄与する。
一方、E触感エラストマーシートは、従来、ペレットで供給していたものをシートに加工したもので、ポリプロピレンの基材の上に同シートを乗せることで、触感を向上させることができる。
◆高分子計器
高分子計器は新製品の恒温槽付硬度測定システム「TD―1000」を中心に、反発弾性試験機「RT―90」、自動ゴム高度計「P2シリーズ」などを紹介した。
TD―1000は、自動ゴム硬度計と恒温槽を一体化させた、新しい硬度測定システムである。従来の試験機では困難とされてきた、高温・低温環境下でのゴム硬さ測定を安定して行える新方式の測定機構を採用した。
今年1月に発売し、すでに納入実績があり「出足がいい」と担当者は手応えを感じている。
ユーザー向けの説明会で実機を披露したため、今回の展示ではパネルとパンフレットのみで説明を行っていた。