【東京モーターショー2015】革新技術や最新製品が一堂に

2015年11月02日

ゴムタイムス社

車の進化にゴム技術が貢献

 「第44回東京モーターショー2015」が28、29日、一般公開を前に報道陣に公開された。今回は「テクノロジー&ファンタジー」をコンセプトに、実用化に向けて開発が急がれている自動運転の試作車などの最新技術や、各社の理念を反映したコンセプトカーなどが披露された。ゴム関連企業も車の環境性や安全性、快適さなどを一層向上させる技術を紹介するとともに、自社の活動やコンセプトなどを来場者に知ってもらうための展示を行っていた。一般公開は10月30日から11月8日まで。

◆ブリヂストン
 ブリヂストンは「イノベーションで一人ひとりを支える」をテーマに、「環境イノベーション」「プレミアムカテゴリー商品」「モータースポーツ」の3つのゾーンに分けて製品・技術を紹介した。

 環境イノベーションゾーンでは、同社が協賛する世界的なソーラーカーレース「ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ2013」に、低燃費タイヤ「エコピア・ウイズ・オロジック」を装着して参戦したマシンを出展。また「エアフリーコンセプト」「ランフラットテクノロジー採用タイヤ」など、同社の技術イノベーションを代表する商品・技術を展示した。

 エコピア・ウイズ・オロジックは、同社独自の低燃費タイヤ技術「オロジック」を搭載したタイヤ。狭幅化により空気抵抗を低減し、大径化によって転がり抵抗を大幅に低減する。エアフリーコンセプトは、タイヤ側面に張り巡らせた特殊形状スポークが荷重を支えることで、空気の充填やパンクの心配がなくなる開発中の技術である。

 一方、プレミアムカテゴリー商品ゾーンでは、グローバルプレミアムブランド「ポテンザ」「レグノ」「ブリザック」に加え、「ポテンザS001」を装着したBMWのプラグインハイブリッド・スポーツカー「i8」を展示した。

 またモータースポーツゾーンでは、ブリヂストン・モータースポーツと、同社のもう一つのタイヤブランドであるファイアストーン・レーシングの活動を紹介。タイヤを供給している「インディーカー・シリーズ」の車両展示などにより、モータースポーツの「ワクワク」感を伝えていた。

◆住友ゴム工業
 住友ゴム工業は、新材料技術「アドバンスド4Dナノ・デザイン」をはじめとした商品開発技術を分かりやすく紹介するとともに、ダンロップとファルケンの2つのブランドそれぞれの世界観を訴求した。

 アドバンスド4Dナノ・デザインは、2011年に完成させた新材料開発技術「4Dナノ・デザイン」を進化させた技術。低燃費性能・グリップ性能・耐摩耗性能の大幅な向上を可能にした。ブースでは、同技術を採用したコンセプトタイヤ「耐摩耗マックストレッド搭載タイヤ」を参考出品した。

 また、開発中の技術として「ジャイロブレード」と「コアシール」の2つの技術を搭載したタイヤも展示した。

 ジャイロブレードは空気充填が要らないため、パンクが発生しないエアレスタイヤ技術である。金属製ホイールと特殊樹脂スポークからなる車輪の外周に、タイヤのトレッド部を装着させた形状をしている。

 コアシールはタイヤトレッド部の損傷による空気漏れを防ぐ、シーラントタイヤ技術。タイヤトレッド部の裏側にシーラント剤(粘着性・粘度のある特殊材料)を塗布することで、クギなどでトレッド部の裏側まで貫通する損傷が発生しても、シーラント剤が穴をふさいで空気漏れを防ぐ。展示ではカットモデルや動画を使って、仕組みを紹介していた。

 ダンロップとファルケンの2つのブランドについては、最新の商品ラインナップの展示を行っていた。

◆横浜ゴム
 横浜ゴムは今年からパートナーシップ契約を結んだイングランド・プレミアリーグのチェルシーと、モータースポーツ活動の紹介をメインに、「アグレッシプな横浜ゴム」を感じてもらえるコンテンツとした。

 その一つがスーパーフォーミュラカーの展示である。同社は来年から全日本スーパーフォーミュラ選手権シリーズに、「アドバン」レーシングタイヤをワンメイク供給することになった。

 供給するのはオレンジオイル配合技術により、優れたグリップ性能を維持しながら環境性能を高めた「アドバンA005」とウェット用の「A006」。会場には、供給タイヤである「アドバンA005」を装着したレースカーを展示していた。

 また、29日から日本や欧州、アジア、南米などで順次限定販売する、タイヤサイドにチェルシーのロゴを刻印した「ブルーアース―AチェルシーFCエディション」や、2010年から研究しているエアロダイナミクス技術のコンセプトタイヤ、グローバル・フラッグシップタイヤ「アドバン・スポーツV105」などの紹介も行った。

 このうちエアロダイナミクス技術は、車の空気抵抗低減に加え、走行時に発生する車両の浮き上がり抑制に貢献するもの。同技術を活用することで、車の燃費性能を高めるとともに、車体の安定性を向上するタイヤの開発が期待できる。

 なお、同社のステージでは、フリースタイル・フットボールの世界チャンピオンである徳田耕太郎さんがチェルシーのユニフォームを着て、世界一のパフォーマンスを披露していた。

◆日本グッドイヤー
 日本グッドイヤーは「グッドイヤー・フューチャー・ラボラトリー」をブーステーマに、ブース全体を一つの研究施設(ラボラトリー)に見立て、革新的な最新技術を紹介した。

 今回、日本初公開となった2つのコンセプトタイヤは、発電タイヤ「BH―03」とモーフィングタイヤ「トリプル・チューブ」である。

 BH―03は、タイヤの発熱と走行時の圧力を電気に変換。実用化されれば、普及が進むハイブリッド車や、今後の成長が見込まれる電気自動車などの走行距離を伸ばすことが可能になると考えられる。

 トリプル・チューブはカーブやウェットなどの路面状況に応じてタイヤが変形することで、安全性と環境性の向上につながるタイヤである。

 ブースでは、コンセプトタイヤを展示するとともに、発電タイヤの仕組みを知ることができる体験コーナー、3D映像による迫力あるプレゼンテーションなどにより、技術を分かりやすく解説していた。

 同社は住友ゴム工業との提携を解消し、10月1日から米グッドイヤーの100%出資会社となり、新たなスタートを切った。日本市場を最重要マーケットの一つと位置付け、日本に適した商品ラインナップの強化を図っている。

 このため、ブースにはコンセプトタイヤのほか、低燃費タイヤ「Eグリップ」、オールシーズンタイヤ「ベクター4シーズンズ」などの主力製品も展示して、積極的にブランドをPRしていた。

◆住友理工
 住友理工は軽量化に成功した自動車用防振ゴム、自動車用ホースのモジュール化の取り組み事例、制遮音性能に加え、衝突時の衝撃軽減にも貢献するソフトエンジンカバー、独自の配合技術で誕生した軽量ウレタン材によるヘッドレストなど、自動車用品事業の製品ラインナップを紹介。

 また、自動車用途への展開も見込まれる独自開発のオールゴムの触覚センサー「スマートラバー(SR)センサ」も出展した。

 自動車用防振ゴムについては、樹脂トルクロッドや樹脂アウターブッシュなど、金属を樹脂に替えることで軽量化を図った製品を展示。すでに採用されているもので、来場者には手に取ってもらい、その軽さを実感してもらっていた。

 自動車用ホースのモジュール化の取り組みでは、開発中の樹脂フィラーネックモジュールを出品し、軽量化や耐食性、燃料低透過性、柔軟性といった特長を紹介した。

 ソフトエンジンカバーは軽量高剛性ウレタンフォームを使い、従来の構成から樹脂カバーを廃止することで40%の軽量化を達成。万一、歩行者と衝突した際には、歩行者への衝撃を軽減する機能もある。

 一方、SRセンサについては、現在、医療や福祉の現場で使われているが、これを車に展開。運転席のシートに内蔵し、圧力の分布や変化を検出することで、疲労や居眠り、急病などを感知して、警告や運転支援などを行うシステムとするべく開発を行っているところだ。

◆NOK
 NOKは主力製品であるオイルシールが車のどの部分に組み込まれているのかを、遊びながら知ることができる体感型ゲームコーナーをメインに据えた展示とした。

 体験する人は、直径20cmほどのオイルシールを渡され、スクリーンの前に立つ。スクリーンには自動車の画像が移り、手にしたオイルシールを車にかざして、車の中でオイルシールを使用している場所を探すというもの。

 車の中のオイルシールは赤い点となって表示されていて、見つけると黄色に変わる。ゲームは4ステージで行われ、いずれも5個ずつオイルシールが隠れており、最後にトータルでの得点が表示される。

 1台の車にはシール製品が約200個使われ、その代表的なものがオイルシール。それほど使われている重要な部品であるにも関わらず、一般のユーザーにはほとんど知られていないことから、こうしたゲームを行うことにした。

 ブースには代表的なシール製品の実物も展示し、ゲームで見つけたシール製品がどのようなものか、分かるようになっていた。

◆豊田合成
 豊田合成は「ゴム・樹脂の高分子技術とLEDで世界にうれしさを届けたい」をテーマに、安全で環境にやさしく、快適な車づくりに貢献する幅広い製品・技術を紹介した。

 主な展示品は「安全・環境ワイヤーモックデモカー」「警告機能付きハンドル」「キャップレスデバイス」「エアバッグカー・フレスビー」「ツナガルコックピット・リンク」など。

 安全・環境ワイヤーモックデモカーでは、ワイヤーでできた車体に、同社の各種エアバッグや軽量ウェザーストリップ、車載LED製品などを搭載することで、使われている場所と特徴が分かるようになっていた。

 警告機能付きハンドルは、ドライバーが意図せずに車線を逸脱した際、ハンドルに内蔵した振動ユニットがグリップ部を振動させ、ドライバーに注意を喚起するもの。すでにレクサスなどに搭載されており、ブースには体験型展示品が置かれていた。

 キャップレスデバイスは、ノズルを差し込むだけで車に給油できるため、車の給油口の内側のふたが要らなくなる。すでに米国では量産され、近々日本でも普及が進むと見られている。

 同社ではこのような、すでに実用化されている製品のほか、2030年頃の超小型モビリティを想定したエアバッグ・カー、ハンドルなどでドライバーの体調や気分を読み取り、その状態に応じた空間を照明や音楽、香りで演出するツナガルコックピットなど、近未来的な技術も提案していた。

◆大野ゴム工業
 大野ゴム工業は、日本自動車部品工業会共同展示9社のうちの1社として、自動車用補修部品を出展した。

 今回の展示では、現在、補修市場で活発に製品が動いている「ダストカバーブーツ」を中央に据え、その左側にゴム製品、右側に樹脂製品を並べた。

 ダストカバーブーツが好調なのは、軽自動車を中心にタイヤの切れ角が大きくなっているためゴムにかかるストレスが大きくなっていることと、車齢が長くなっているためだという。

 また、ゴム製品で特に伸びているのが整備工場などで車体を持ち上げるリフト用のゴムパッドだ。顧客の要望で開発され、その声に応える形で6種類までラインナップが広がった。

 このように、顧客の求めに積極的に応じて多様な製品を開発していることが、同社への顧客からの高い評価につながっており、今後もそうした方針で製品開発を行っていく姿勢をアピールしていた。

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