住友ゴム工業は11月12日、東京・大手町の大手町サンケイプラザでプレスセミナーを開催し、若林昇・材料第三部長が新材料開発技術「アドバンスド4Dナノデザイン」と、高機能バイオマス材料開発への取り組みを説明した。若林部長のほか、村岡清繁・執行役員材料開発本部長、石田博一・材料企画部長が出席した。
タイヤ開発では、グリップ・低燃費・耐摩耗という、相反する3つの性能を向上させることが求められる。同社は11年に発表した「4Dナノデザイン」を使い、グリップ・低燃費性能を大幅に進化させた「エナセーブNEXT」を開発し、昨年発売した。
しかし、今後ハイブリッド車や電気自動車などのエコカーが普及していくと、車体の高重量とモーターの低い低速トルクに対応する耐摩耗性能が、従来以上に重要になってくることなどから、4Dナノデザインを進化させる必要があった。そこで同社ではその進化版であるアドバンスド4Dナノデザインの開発に取り組み、このほど完成した。
同技術の特長は、従来はシリカ三次元構造や架橋構造など、タイヤ構造の各領域を別々に解析していたのに対し、構造と動きをトータルに把握すすることで、よりリアルな現象のシミュレーションが可能になったこと。
これにより、様々なスケールで生じる「ストレス」が、タイヤの3大性能に関係していることが分かった。
同社ではこれを基に、タイヤゴム内部の構造と動きに潜む様々なストレスをコントロールして小さくする「ストレスコントロールテクノロジー」を確立。超ロングライフを目指したコンセプトタイヤ「耐摩耗マックストレッドゴム搭載タイヤ」を開発した。
同タイヤは、11年当時の代表的なタイヤに比べ、低燃費・ウエットグリップ性能は維持しつつ、耐摩耗性能を200%向上させている。
ただ、同タイヤは耐摩耗性能に特化させたものであることから、今後はストレスコントロールテクノロジーを活用し、3大性能すべてを向上させたタイヤの開発を行っていく考えだ。
なお、アドバンスド4Dナノデザインの開発に当たっては、ゴムの構造解析に大型放射光研究施設「SPring―8」、運動解析には大強度陽子加速器施設「J―PARC」、シミュレーションにはスーパーコンピューター「京」を利用。「日本の技術の粋を集めた、世界最高レベルの最先端大型研究施設を連携」(村岡執行役員)させることで実現した。
一方、高機能バイオマス材料開発では、今回「創生高機能第1世代」としてグリップ性能の長持ちに着目し、軟化剤の開発に取り組んだ。
一般にタイヤ用ゴムには、石油由来であるオイルなどの軟化剤を加え、ゴムにしなやかさを持たせ、グリップを確保している。しかし、これはゴムと結合していないため、オイルが抜けてゴムが硬くなり、性能が徐々に低下してしまう。
これに対し、同社ではゴム分子と結合する「しなやか成分」を、バイオマスから作り出すことに成功し、初期性能を維持できるゴムを開発。これを使ったグリップ性能が長持ちするタイヤを、16年に量産化することにした。
さらに、今後はこの高機能バイオマス材料開発を様々な性能に適用させ、20年には安全性・快適性・経済性をさらに向上させた「創生高機能第2世代」を開発する計画だ。