【新春トップインタビュー】東洋ゴム工業 清水隆史社長

2016年01月01日

ゴムタイムス社
  • 清水隆史
  • 代表取締役社長
  • 東洋ゴム工業
  • 一から出直す気概で再生へ

 東洋ゴム工業の清水隆史社長は、建築用免震ゴムと一般産業用防振ゴム問題を受けての山本卓司前社長の辞任により、急遽後を継ぐことになった。外部から招へいした駒口克己会長と二人三脚で、正念場ともいえる16年に臨むことになる。

 ◆15年を振り返って
 当社は昨年、あってはならない不正問題を立て続けに発生させ、会社有史以来の重大な事態のさなかにあることを真摯に受け止めている。

 今なお、多くの関係者の皆様方にご迷惑やご心配をおかけしていることを心よりお詫びしたい。

 当社製建築用免震ゴム問題、一般産業用防振ゴム問題への対処は、当社の経営における最優先的重要課題として位置づけている。

 ◆具体策は
 免震ゴム問題の発覚後、6月13日に再発防止策として、緊急対策2項目、継続対策5項目を策定した。

 緊急対策では「緊急品質監査の実施」「品質・コンプライアンス調査委員会の設置・調査」、継続対策としては「再発防止に向けた新組織体制」「ものづくりの不正を起こさない仕組み構築」「全社として問題に対処する仕組みの構築」「企業風土の改革」「再発防止策の徹底、継続」に取り組んでいる。

 このうち、緊急品質監査の実施では、検査工程・実作業に焦点を当て「公的規格や顧客要求を社内標準に正しく展開しているか」「データ測定と合否判定を適正に実施しているか」「市場へ正規品が出荷されているか」を確認した。

 品質・コンプライアンス調査委員会の調査については、外部弁護士を含めた調査チームを編成し、緊急品質監査と同じ全23拠点で、原料受け入れから製品出荷まで全工程について、業務監査、品質監査、コンプライアンス調査をセットで網羅的に実施し、要改善点を改善するまでフォローすることにした。

 継続対策のうち、再発防止に向けた新組織体制としては、コンプライアンスオフィサー制度を導入した。コンプライアンス事案を全社・組織的に把握し、一元的に管理するため、7月1日付けでチーフ・コンプライアンスオフィサーに就任した高木康史常務執行役員を中心とした組織に改編し、併せて各事業本部、地域ごとにコンプライアンスオフィサーを任命している。

 また、8月1日付けでダイバーテック事業本部を改編し、これまで1つのアイテムごとに1ユニットで完結していた組織を生産、技術、営業という縦割りにして、組織間のチェック体制を再構築するとともに、人材のローテーションを図りながら業務の「見える化」を促進した。

 その他、ものづくりの不正を起こさない仕組みの構築では、品質・コンプライアンス調査委員会の調査と並行して、内部通報制度の活用促進を図るべく、現行制度の検証を行っている。

 全社として問題に対処する仕組みの構築では、事業評価ガイドラインの策定・運営に向けた調査・検証を進めており、早期にガイドラインを整備・確定する。

 企業風土の改革については、トップダウンの意識改革コミットメントを行うとともに、ボトムアップの意識変革活動などを目的に「風土改革委員会」を設置する。

 ◆信頼回復に向けて
 昨年11月12日に社長に就任した私自らが先頭に立って、社員と力を合わせ、不退転の覚悟で一日も早い問題解決と信頼回復に取り組んでいく考えだ。

 また、京セラドキュメントソリューションズの副会長であった駒口が当社会長に就任した。駒口とともに二人三脚で、抜本的な企業風土の改革、ガバナンスの再強化を進めていく。

 会社全体から見れば、事業規模では決して大きいとはいえない事業の現場で不正が起こり、当社と当社に関わるさまざまな関係者を突き揺さぶるような、たいへん大きな社会問題に発展した。

 このことは多くの教訓と示唆を与えてくれており、また、今一度、自らを見つめ直し、猛省し、そしてこの難局を乗り越えるという好機を得たのだと考えている。

 グループ全社員一同、これを反省し、企業としての再生に挑んでいきたいと思っている。

 ◆組織改正について
 1月1日付で組織改正、人事異動を行なった。タイヤ事業とダイバーテック事業の部門を超えた横断的な所管、経営基盤強化を支えるコーポレート機能の向上など、全社を挙げて問題の早期収拾に臨むとともに、社内リソースを最大限に有効化して、さまざまな課題を機動的かつ抜本的に対処していく姿勢を示している。

 私は本来、会社は社会のために必要とされる存在でなければならないと考えている。社会から存在価値を認めてもらい、期待していただける会社に、また、社員には当社で働く喜びと誇りを持ってもらえる会社にしたいという強い想いを持っている。

 もう一度、一から出直して創業するくらいの気概を持ち、必ず、東洋ゴムグループの再生を果たしていきたいと思う。

 ◆16年の抱負は
 為替、原料安で収益が高まった反面、中東、アフリカの政情不安、中国、新興国、原油産出国の低迷など世界規模で影響を与える不安定因子は真横にあり、今後とも楽観は許さない経済状況が続くと考えられる。

 急峻な変化に動じず、知恵と工夫で乗り越えられることが本当に意味での強さだと思う。

 持続的な事業成長を担保できるよう、自らを磨くとともに、スピード感をあげて確実に変革と課題解決を遂行していきたいと思う。

〈アングル〉

 清水社長は海外での実績が評価されるとともに、現在の状況下で経営トップとしての十分な覚悟・決意、経営能力・資質を備えているとの評価で新社長に選ばれた。この難局をどう乗り切って行くのか。その手腕に期待したい。

本文:2231文字

【新春トップインタビュー】東洋ゴム工業 清水隆史社長

キーワード: ··