横浜ゴム オランダの農機・建機用タイヤ買収

2016年03月28日

ゴムタイムス社

 横浜ゴムは3月28日、東京・内幸町の帝国ホテルで、オランダの農機・建機用タイヤ会社「アライアンス・タイヤ・グループ(ATG)」買収に関する記者会見を開催した。

 南雲忠信会長兼CEOは、景気に左右されにくい農機用を中心とする生産財タイヤを強化することで、15年度の業績の伸び悩みにより、達成が危ぶまれていた中期経営計画「GD100」の目標達成が期待できるとの見方を示した。

 会見には、南雲会長のほか、山石昌孝執行役員、ATGの創業者で株主でもあるヨゲシュ・マハンサリア氏が出席。最初に南雲会長が今回の買収のGD100における位置付けと、戦略的意義について説明を行った。

 同社は06~17年までの12年を、3年を1フェーズとして区切ったGD100を推進しており、現在は最終フェーズの2年目を迎えている。

 14年度までは順調に成長してきたものの、競争激化による販売価格の下落などにより、15年度は売上高は増加したが営業利益は減少。当初目標である17年度に売上高7700億円、営業利益800億円を達成することが難しい状況になった。

 これを打開するため、実施したのがATGの買収だ。横浜ゴムのタイヤ事業は消費財タイヤが中心で、生産財タイヤの割合が小さいことが課題であった。検討を進める中で、買収先としてATGが最適だと判断し、昨年9月から売主との交渉を進め、3月25日に合意した。

 南雲会長は「GD100の目標に対しても、16年度売上見込みの両社売上を単純に合算すると7252億円となり、17年度の目標達成が期待できる規模になった。今後、様々な取り組みを通じ、単純に合算した以上の効果を生み出していけると確信している」と語った。

 続いて、山石執行役員がATGの概要と買収内容の詳細を説明した。

 ATGの創立は06年。15年度の売上高は約635億円、営業利益は約114億円。従業員数は約4500人。農機用・林業用・産機用・建機用タイヤを製造・販売し、生産拠点をイスラエルに1ヵ所、インドに2ヵ所設けている。ブランド名は「アライアンス」「ギャラクシー」「プリメックス」の3種類。

 アライアンスは1950年にイスラエルで設立された老舗農業車両用タイヤブランドで、農機用・林業用・産機用・建機用の1000を超える製品サイズを持ち、欧州を中心に販売されている。

 ギャラクシーは70年代に立ち上がった米国の販社が保有しているブランド。北米市場が強く、農機用を中心に建機用・産機用を展開している。プリメックスは林業用・鉱山用を主に、建機用・産機用を販売し、やはり北米に強みを持っている。

 生産体制としては、イスラエルのハデラ工場の生産能力は年産4万tだが、現在の生産規模は同2万6000t。これは、同工場で付加価値の高いタイヤを生産し、それ以外の製品はインドのティルネルヴェーリ工場とダヘジ工場に移設しているためだ。
 ティルネルヴェーリ工場は10年に生産を開始した。現在は同5万6000tだが、今後10万1000tにまで引き上げる。ダヘジ工場は昨年3月に稼働し、同5万4000tの生産を計画している。

 ATGの売上構成比は、北米が51%、欧州が40%、その他が9%。製品別では農機用が51%、産機用29%、林業用7%など。

 ATGの強みは高い成長力、高い収益性、農機・産業用機械タイヤ分野でのブランド力。成長力と収益性の高さは、技術力の高いイスラエル工場のタイヤ生産を、低コストのインド工場に移管していることによる。

 現在、横浜ゴムのタイヤ事業の売上の8割が消費財タイヤで生産財は2割に留まっている。今回の買収により、消費財タイヤが71%、生産財タイヤが29%となる。特に「農機用は景気変動に左右されないため、事業の安定化に貢献していくことが期待される」と山石執行役員は述べた。

 また、販売網の拡大、生産・物流効率の向上、共同・最適購買によるコストダウン、ブランド力の活用により、3年後に営業利益ベースで1500万ドル以上のシナジー効果を見込んでいる。

 今回買収したのはATG株式の100%、買収価格は約1356億円、買収完了予定時期は7月1日で、資金調達は自己資金と銀行借入で賄う。

 最後にマハンサリア氏があいさつを行い「今回の買収により、農業用・林業用・産業用タイヤで、数年のうちに世界のリーダーの一画を占めるという、目標の一助となることを信じている」と述べた。

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