創刊70周年特別企画 各社の事業戦略 ブリヂストン

2016年10月24日

ゴムタイムス社

真のグローバル企業へ
全てに「断トツ」目指す 2015中計で重点3項目提示

津谷CEO

津谷CEO

 ブリヂストン(津谷正明CEO)グループでは、「真のグローバル企業」と「業界において全てに『断トツ』」を目指し、2016年からの5年間を対象とした2015中期経営計画(2015MTP)を経営の中心に据え、戦略的な施策を進めるとともに、経営改革のスピードの向上を図っている。2015MTPの重点項目は「グローバル企業文化の育成」「グローバル経営人材の育成」「グローバル経営体制の整備」―の3点。このうち、グローバル企業文化の育成では「ブランド戦略の明確化」「技術/ビジネスモデル・イノベーション」「継続的改善」に取り組んでいる。

■グローバル企業文化の育成

 ◆ブランド戦略の明確化

 ブランド戦略の明確化では、事業戦略・マーケティング戦略と整合性ある形で統一されたブランド戦略を展開。ブリヂストンブランドについてはタイヤ・多角化商品のメジャーブランドとして、さらなるブランド力の強化を図る。

 ファイアストンブランドは、歴史的経緯により地域的にばらばらに展開していたものを、メジャーブランドとして育成していく。また市場が多様化していく中で、2つのメジャーブランドに加え、デイトンのようなリージョナルブランドも使い分けていく。

 メジャーブランドのうちブリヂストンに関しては、フルネームでは文字数が多く視認性に劣ることから「B」マークの普及に努め、グローバル企業広告や屋外広告、名刺など様々な形で使用する。

ファイアストーンのタイヤを装着した「インディーカー・シリーズ」の車両

ファイアストーンのタイヤを装着した「インディーカー・シリーズ」の車両

 また、ワールドワイド公式オリンピックパートナーとして、16年はブラジル・韓国・日本・米国の4ヵ国限定で、17年からはグローバルでスポンサーとしての活動を展開する。

 スポーツイベントを通じたブランド力強化として、ゴルフは日本で「ブリヂストンオープン」、米国では「ワールドゴルフチャンピオンシップ」、冬用タイヤの拡販に努めている欧州では「FISアルペンスキー・ワールドカップ」、南米では「リベルタドーレス」などのスポンサーを務めている。

 モータースポーツに関しては、オーストラリアのワールドソーラーカーレース、日本とタイでは「スーパーGT」を支援。ゴルフ、自転車などの多角化事業でもブランド強化に努める。

 ◆技術/ビジネスモデル・イノベーション

 ブリヂストンはイノベーションを技術だけでなく、ビジネスモデルやデザインなども含めて捉えている。

 社会の大きな変化であるメガトレンドを読みながら、顧客のニーズを把握。その上で顧客価値を創造するため、イノベーション文化を社内に浸透させ、グローバルR&D体制を強化するとともに、商品単体からソリューションへとレベルアップを図る。

 グローバルR&D体制の強化では、最適化の一つの方向として、小平の開発・生産拠点の再構築に取り組む。

 ソリューションビジネスに関しては「パンク対応ソリューション」として、米国から開始した「ドライブガード」という補修市場用ランフラットタイヤなどを展開する。

 また、車の乗り心地についての「NVHソリューション」として、同社が持つタイヤ・防振ゴム・シートパッドを合わせて提案。運送ソリューション」ではトラック用新品タイヤとリトレッド、サービス、メンテナンス、ITを組み合わせて提案する。

 「鉱山ソリューション」については、鉱山車両用タイヤ、コンベヤベルト、サービスを、「農機ソリューション」でも農機用タイヤだけでなく、ゴムクローラーとサービスも合わせて提供する。

 ◆継続的改善

 継続的改善に関しては、経営の全ての面で進めており、その一環として「ブリヂストングループ・グローバルTQM大会」「ブリヂストングループ・アワード」を開催している。

 このうち、グループ&グローバルTQM大会は、グループ内での優れた改善事例をグローバルで共有化し相互研鑽することで、より強固な経営体質の基盤づくりにつなげていくことを目的として、10年から実施しているものだ。

 一方、グループアワードは、これまで地域別・事業別に表彰を行っていたものを、08年からグローバル全体での表彰制度として表彰を開始し、16年からは「企業活動全般」「社会貢献活動」「環境活動」「リスク・危険対策、リスク管理活動」「教育活動」の5分野で表彰する仕組みとしている。

 


 

■グローバル経営人材の育成

 重点課題の2点目であるグローバル経営人材の育成に関しては、「Global EXCO(グローバル・エクスコ、グローバル経営執行会議)」で、どのような人材が必要なのかという議論を重ねている。

 また、経営環境が激変する中で、多様性が求められるようになっていることから、将来の経営陣をグローバルに育成する「GDC(グローバル・ディベロップメント・クラス)」と、グローバルでの人事ローテーションや教育・訓練プログラムを一層充実させる。

 さらに、コミュニケーションツールとして英語の公用化を進める。

 ただし、全て英語にするというわけではなく、グローバル・エクスコやグループ&グローバルTQM大会といったグローバル会議は、効率化のため英語を使うということだ。

 グローバル・エクスコは、グローバルな業務執行に関する最高位の会議体で、5ヵ国13人のメンバーで構成。年に6回ほど開催し、情報の共有化や経営方針の議論などを行っている。

 グローバル・エクスコの傘下に「Committee(コミッティ)」を設け、具体的な課題に取り組んでいる。コミッティでは課題ごとにチームを作り、そこで得た結論を答申の形でグローバル・エクスコに上げ、決定することになっている。

■グローバル経営体制の整備

水素充填用ホース

水素充填用ホース

 3点目の重点課題であるグローバル経営体制の整備のうち、ガバナンス体制の整備については、ガバナンス強化と執行のスピードアップのため、監査役会設置会社から指名委員会等設置会社に移行するほか、権限・責任の明確化と意思決定権限配分の最適化を図る。

 また、グローバル・エクスコを軸とした執行体制を確立。タイヤ事業SBU(戦略事業ユニット)を再編し、GHO(グローバル本社)、GMP(グローバル経営プラットフォーム)、SBUの役割分担を明確化する。

 タイヤに比べてグローバル化が遅れていた多角化事業でも、主要事業であるコンベヤベルト、防振ゴムで生産拠点の拡充を推進。

 水素充填用ホースのような環境に貢献する製品の開発や、横浜工場内に開設した免震館で免震ゴムを一層訴求することなどにより、多角化事業の拡充を図る。

 


 

小平拠点を再構築 4強化領域で新たな施設

 2015MTPの中で、具体的な施策の一つとして掲げられているのが、小平の開発・生産拠点の再構築だ。

小平拠点

小平拠点

 小平には現在、技術センターと東京工場がある。研究開発の再構築では、従来の商品単体の技術開発に留まらず、社会の変化を先読みした新たな顧客価値を創出する技術革新やソリューション型の提案力を強化。「リサーチ」「モノづくり」「試験・評価」「ビジネスデザイン」の4つの強化領域を設定し新たな施設を設置する。

 リサーチについては、「リサーチセンター(仮)」を設け、バイオ・原材料開発を含めたすべての研究室と実験室を集約するとともに、産官学連携をはじめ社外との協創を促進して革新技術の開発を行う。

 モノづくりでは「先端生産技術センター(仮)」を設置。同社の将来のモノづくりを担うIT技術を駆使した生産ラインや、新概念商品の実現に向けた生産技術を開発する。

 試験・評価に関しては「市場再現・体験センター(仮)」で、製品単体だけでなく、車両と一体となった試験・評価を行い、新しく提案する価値を顧客目線で検証する。

 ビジネスデザインについては「デザインセンター(仮)」をつくり、リサーチ、モノづくり、試験・評価の3つの領域を統合・デザインして、オープンな形で価値創造を行い、新しいビジネスモデルを提案。大学や社外機関との協創、社会実験の発信基地とする。

 投資額は約300億円を想定しており、17年に着工し、18年から順次開設する予定だ。

 


 

継続的改善を推進 グローバルTQM大会開催

TQC大会の様子

TQC大会の様子

 ブリヂストンが継続的改善の一環として実施しているのが「ブリヂストングループ・グローバルTQM大会」である。

 グループ・グローバルTQM大会は、グループ内での優れた改善事例をグローバルで共有化し相互研鑽することで、より強固な経営体質の基盤づくりにつなげていくことを目的として、2010年から実施している。

 昨年9月には、小平で第6回大会を開催し、日本の事業所をはじめ、アメリカ、メキシコ、スペイン、ポーランド、トルコ、中国、タイ、インドネシアといった世界各国のグループ会社・関連会社から約240人が参加。生産、販売、サービスなど、多岐にわたる分野での改善事例、全16件を発表した。

 今回は、第一線の現場における優れた改善活動事例として「TQM賞」4件、「感動賞」3件を表彰した。また2014年(第5回)から、さらなるTQM活動の活性化のため、表彰事例の中からグランプリを選定するようになっており、今回は2件を選定した。

 TQM賞を受賞したのは、ブリヂストン・ヨーロッパ・イースト・リージョン(ポーランド)、ブリヂストン佐賀工場、ブリヂストン・アメリカス・ウォーレン工場(米国)、ブリヂストン東京工場。佐賀工場とアメリカス・ウォーレン工場がグランプリを獲得した。

 感動賞はファイアストン・ビルディング・プロダクツ・カンパニー(米国)、ブリヂストン・ヨーロッパ・NV/SA・ビルバオ工場(スペイン)ブリヂストン・タイヤ・P.T.インドネシア・カラワン工場(インドネシア)が受賞している。

 


 

2015MTPの目標

 2015MTPの目標については、これまでの目標を維持する。

 経営の最終目標を「真のグローバル企業」「業界において全てに『断トツ』」とし、この目標を達成するため、「Lean(無駄のない)&Strategic(戦略的)」「グループ・グローバル最適」という基本姿勢を堅持し、SBU組織体制と中期経営計画をツールとして、経営改革を継続する。

 質的目標として「成長と利益の確保」「整合性と永続性」を掲げ、量的目標としては「業界平均を上回る成長」、ROA(総資本利益率)6%、OP(営業利益率)10%、ROE(自己資本利益率)12%を継続確保するとともに、各SBUでのOP10%達成と継続的改善を設定している。

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