創刊70周年特別企画 タイヤ業界の現況

2016年10月24日

ゴムタイムス社

国内生産5年連続で減少
海外移管による輸出減が響く

 2011~15年の5年間における自動車タイヤ・チューブの生産量(新ゴム量)推移を見ると、11年の121万1963tをピークに漸減傾向にある。少子高齢化などによって国内の自動車市場が縮小する中で、自動車メーカーは海外の成長市場で生産拠点を構築。これと並行して、タイヤメーカーも次々に海外に生産拠点を設けたことで輸出用も減り、国内の生産量は長期的に横ばい、あるいは減少する傾向にあると言える。

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タイヤサイズを狭幅・大径化することで、低燃費と安全性を高次元で両立したブリヂストン「エコピアEP500オロジック」

 リーマンショック後の2009年に100万tを割り込んだ生産量は、2010年に119万5711tに回復した。2011年の東日本大震災と急激な円高の影響により、日本経済がマイナス成長になると、自動車生産・タイヤ生産とも減少基調となり、2012年以降4年連続で減少している。2015年は軽自動車税の増税により自動車生産が減少し、タイヤ生産が落ち込んだ。
 〈2011年〉
 3月に東日本大震災が発生した2011年は、稼働が停止した工場もあったが、一部で震災による需要増もあり、タイヤ・チューブ全体での生産量は前年比1・4%増となった。出荷量(新ゴム量)は国内が同0・9%増、輸出が1・7%増、合計で1・4%増となった。
 新車用タイヤ販売は、震災の影響により乗用車用が大きく落ち込み、四輪車用計で同13・4%減。
 市販用タイヤ販売は、夏タイヤが震災によるトラック用の復興需要増などがあったほか、冬タイヤも年初の降雪や震災による復興需要が発生し、四輪車用計で同6・9%増。
 〈2012年〉
 震災後の需要喚起のため、エコカー補助金制度が施行されて自動車生産台数は増加したものの、前年のタイ洪水の影響などから輸出出荷が2ケタの減少となり、タイヤ・チューブ全体の生産量は同5・4%減となった。出荷量は国内が同2・9%増、輸出が11・6%減、合計で5・4%減。
 新車用販売は、12年は前年の震災による落ち込みからの回復に加え、エコカー補助金制度もあり、四輪車用計で同14・5%増。
 市販用販売は、夏用タイヤが震災による一時的な需要増からの反動により、やや減少した。冬用タイヤについては、早めの降雪があり、やや増加した。四輪車用計で同0・8%減。
 〈2013年〉
 年前半は前年に終了したエコカー補助金効果の剥落による需要減があったものの、年後半は消費増税を控えた駆け込み需要などの効果が相殺し、タイヤ・チューブ全体の生産量は同1・7%減となった。出荷量は国内が同2・3%増、輸出が5・6%減、合計で1・8%減となった。
 新車用販売は、国内新車・輸出車とも上期に減少した影響が大きく、下期は増加に転じたものの、四輪車用合計で同3・4%減。
 市販用の販売は、夏用タイヤが景気の回復傾向により増加した。冬用タイヤは早い降雪の影響があり、四輪車用計で同3・8%増。
 〈2014年〉
 4月に消費税が8%に増税。後半に発生した消費増税前の駆け込み需要の反動で、自動車生産が減少した。タイヤ・チューブ全体の生産量は同0・6%減となった。出荷量は国内が同1・3%増、輸出が1・5%減、合計で0・1%減となった。
 新車用販売は、国内新車販売が増加した一方、輸出が減少したことから、四輪車用計で前年並みの同0・2%増。
 市販用販売は、夏用タイヤが消費増税前の駆け込み需要の影響があり増加。冬用タイヤは、前年より降雪が遅れた影響で、四輪車用計で同3・3%増。
 〈2015年〉
 4月に軽自動車税の増税が実施され、後半は駆け込み需要の反動減が発生した。タイヤ・チューブ全体の生産量は同5・7%減となった。出荷量は国内が同4・9%減、輸出が6・6%減、合計で5・8%減となった。
 新車用販売は、自動車輸出が前年をやや上回るものの、国内新車販売の減少により、四輪車用計で同4・2%減。
 市販用販売は、冬用タイヤが年初の降雪が少なかった影響などから四輪車用計で同5・6%減。

自動車タイヤ・チューブ生産推移

 


 

15年は自動車生産減が響く 降雪減で冬タイヤ需要鈍る

 日本自動車タイヤ協会(JATMA)がまとめた2015年の自動車タイヤ・チューブ生産、出荷、在庫実績によると、生産量は合計105万7570tで前年同期比5・7%減、国内出荷は54万2844tで同4・9%減、輸出出荷は52万5625tで同6・6%減となった。
 15年のタイヤ・チューブ生産は、年初から自動車生産台数の前年割れや、前年あった降雪の影響がなかったことにより不調で、年間を通しても不振が続いた。
 1~3月は、自動車生産台数が連続して前年同月比でマイナスになっていることに加え、前年同期が消費増税前の駆け込み需要により大幅増となったこと、昨年のような非積雪地帯での降雪がなかったことなどにより、前年割れとなった。
 トラック・バス用はトラック・バスともに生産が上向いたが、市販用タイヤの落ち込みが響いた。乗用車は生産減少と市販用タイヤの不調が影響。小型トラックは生産が回復したことによる。建設車両用は、3月の建設機械出荷額の総合計が20ヵ月ぶりに減少したことで減速した。
 4~6月も前年割れが続いた。品種別ではトラック・バス用、小型トラック用、乗用車用が一貫して前年割れ、建設車両用は4月に微増となったものの、その後はマイナスが続いた。
 トラック・バス用は、バスの生産が外国人観光客の急増により増加したが、1~3月の市販用タイヤが前年割れで在庫が積み増されたこともあって回復しなかった。乗用車用は軽自動車税増税の影響により、生産のマイナスが継続したことで減少が続いた。
 7~9月も減少が継続。品種別でもトラック・バス用、小型トラック用、乗用車用、建設車両用のいずれも、この期間を通じてマイナスだった。建設車両の生産が一時的に回復したものの、全体的に生産が不振だったため、タイヤ・チューブの生産も低迷した。
 10~12月も依然として回復には至らず、この期間、すべての品種で前年実績割れとなった。
 ただ、乗用車の生産が10、11月と2ヵ月連続でプラスになったことで、乗用車用は横ばいの水準まで戻ってきた。一方、トラック・バス用は11、12月は2桁減、小型トラック用も12月は2桁減、建設車両用も3ヵ月連続で2桁減になっており、乗用車以外は厳しい状況が続いている。

2015年の自動車タイヤ・チューブ月別需給の推移

2015年の自動車タイヤ・チューブ月別需給の推移


 

品種別生産・出荷動向 乗用車用50万t台保つ

 ◆トラック・バス用タイヤの需給
 日本自動車タイヤ協会(JATMA)がまとめた15年の自動車タイヤ・チューブの生産・出荷・在庫実績によると、15年のトラック・バス用タイヤの生産量は、ゴム量で23万9596t、タイヤ本数で1026万6000本だった。
 出荷状況については国内出荷がゴム量で12万5959t、本数で610万2000本、輸出出荷はゴム量で11万4516t、本数で414万6000本。
 販売については、新車用が本数で137万2000本、市販用が514万3000本となっている。
 ◆小型トラック用タイヤ
 15年の小型トラック用タイヤの生産量は、ゴム量で13万9477t、タイヤ本数で2314万1000本。
 出荷状況は国内出荷がゴム量で8万4935t、本数で1691万3000本、輸出出荷はゴム量で5万6596t、本数で643万7000本。
 販売については、新車用が本数で582万1000本、市販用が1361万5000本だった。
 ◆乗用車用タイヤ
 15年の乗用車用タイヤの生産量は、ゴム量で50万5586t、タイヤ本数で1億1382万1000本だった。
 出荷状況では、国内出荷がゴム量で30万4460t、本数で7744万1000本、輸出出荷はゴム量で20万1221t、本数で3671万7000本。
 販売については、新車用が本数で3601万2000本、市販用が5169万9000本となっている。
 ◆建設車両用タイヤ
 15年の建設車両用タイヤの生産量は、ゴム量で15万5453t、タイヤ本数で44万6000本となった。
 出荷状況は国内出荷がゴム量で1万2889t、本数で19万4000本、輸出出荷はゴム量で14万3992t、本数で32万6000本だった。
 販売は、新車用が本数で10万6000本、市販用が10万3000本となった。
 ◆産業車両用タイヤ
 15年の産業車両用タイヤの生産量は、ゴム量で5380t、タイヤ本数で41万5000本。
 出荷状況は、国内出荷がゴム量で6111t、本数で54万1000本、輸出出荷はゴム量で1832t、本数で6万5000本だった。
 販売については、新車用が本数で23万8000本、市販用が58万1000本となった。

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